第1回 背徳の全滅劇

果たして、ゲームをプレイしていてこんなにもやるせない気持ちにさせられる事があるでしょうか。いつもの様に楽しくゲームをプレイしていたと言うのにだ、あまりにも酷いその仕打ち。折角多忙の中割いた趣味の時間を見事にぶち壊すその現実に、そりゃあ気分も害しますって。
特に、FF1とかFF2とかをプレイした事のある方なら、経験した事もあるんじゃないですか? 本来その地域では出会う筈のない、それでいて数十時間後にようやくお目にかかる予定だった強敵と突然出くわして、何も出来ないまま全滅してしまった、なんて事。
これはねえ、理不尽ですよ、理不尽極まりないですよお。これの何が一番やるせないかって、それはこちら側には一切の不備、落ち度が無いって事なんです。そりゃまあ確かに、そういった強敵が現れるのは大抵海岸沿いとかに限られているとは言えだ、普段通りのザコ敵が出て来るエリアと、卑怯の塊である強力ザコ等が出て来るエリアとの間に何か目印めいたものでもあるかい? 無いでしょう、無いでしょうが。ただ我々は、あの広い大陸を隅々まで踏破したいというその一心で、海岸沿いにまで足を延ばしたに過ぎないんです。そういう意味では、私達はFF1乃至はFF2というゲームを、余す所無く遊び尽くしたいんだ、知り尽くしたいんだと思い行動している点で、何かとそうでないプレイヤーに比べてFFのファンであり、マニアである訳です。それが何故、そんな私達にたいしてだけその様な仕打ちに見舞われなければならんのですか。ただ目的地だけを転々と移動するだけのライトユーザーが事無きを得ている一方で、何故我々ヘビーユーザーだけが痛い目に遭わなければならないのですか。

またこういった強敵に遭う時ってのは、大陸を隅々まで歩くだけの暇がある時に限られる訳で、つまり装備品等を購入する為の資金稼ぎや、経験値稼ぎの最中に出会うケースが少なくないんですよね。これがもし、しばらくは街の付近でうろちょろしつつ稼ぎを行ってたけど、それも飽きてきたからちょっと行動範囲を広げよう、なあんて思って海岸に近付いちゃった挙句に出くわしたりなんかしたらどうなるとお思いですか。旧スクウェアの皆様方。彼は、或いは彼女は、それまで幾許かの時間を費やして、ある程度のギルなり経験なりを手にしていたにも拘らず、ただその一度のバトルに全てを奪われてしまうのです。そうして失った時間は三十分かもしれない、一時間かもしれない、無論、もっともっと多くの時間が泡となって消えた人もいたでしょう。そんな人々の悲痛な叫び、魂の叫びを、聞く事が出来ますか。
私にも経験はありますよ。あれは確か魔法を買う為のギルを稼いでいた時でした。文字通り隅から隅まで陸を踏破すべく、とは言ってもこちらが対処出来るモンスターの強さにも限度ってもんがありますから、節度ある範囲に絞った上で広大な大地を歩んでいた訳です。そしたらですよ、海を挟んだ向こう側にまだ見ぬ地をうかがう事の出来る場所に戦士達が差し掛かった時に、それは現れたのです。
ほうほうほう、そう来ましたかと。こちとら既に何千ギルか稼いでいるってのに、あんたら向こう岸からわざわざ泳いでやって来たか知らんけども、そういう行為に打って出ますか。
勿論私はそいつらに出会うのは初めてですから、こいつらが100%まだ出会うべきでなかったモンスターであるかどうかは分からない。けれども、雰囲気というものがあるでしょう。普通にこの辺りに出現するモンスターなら、その図体はまだ小さいから最多で一気に九体が出現するケースも考えられるだろうにだぞ、こいつらどう頑張って並べても四体がいいとこじゃないか。そんな図体のデカい奴等が、この辺の弱々しいザコモンスターよろしく簡単に倒されてくれる訳がないでしょうよ。
それでも、それでも私は一縷の望みに賭けて、奴等に対し一撃を見舞ってみるのです。そして知る事となる逃れられない運命…更には、攻撃しようと思っていた対象が、他者の攻撃によって既に倒されてしまっていた時、攻撃対象を自動補整しないFF1及びFF2の厄介な仕様がこの場面においてプレイヤーに非情な現実を突きつけます。例え四対四のバトルであっても、一ターンでは全滅に至らないのです。既に全滅が確定している状況で、更に操作を要求する無慈悲なテレビ画面。どうせ全滅するなら、リセットしてしまえばいいのかもしれない。でも、コツコツ貯めた数千ギルを己の手で消滅させるなんて、出来る筈がないでしょう? だから私は最後に残った僅かな望みを、「にげる」コマンドに託すのです。奴等の魔の手から逃げられない事は分かっていても。

悪いのは海岸沿いに足を運んだ私の方か? それは違う。間違いなく悪いのは、何を血迷ったか海を泳いで対岸に辿り着いてしまった身の程を知らないモンスターの方なのです。ただそれでも、バトルシステムにATBが採用された以降のFFならば、逃げられる可能性はある。逃げられる可能性があるからこそ、そういったモンスター達の存在もまだ許せるものではある。でも、FF1やFF2ではそれは出来ないんですよ。圧倒的に強いモンスターを相手にするともう対処方法が無いんですよ。だから理不尽で、だからやるせない。全滅後、しばらく放心状態になってしまう事を禁じ得ません、事によるとその日はもうゲームをプレイする気すら失ってしまうかもしれない。折角気持ち良く、楽しくゲームをしていたのに。お前等に会ってさえいなければ、この楽しい時間はまだ後ちょっと続いた筈なのに。何て罪な、道徳のなっていないモンスター達なのだろうかと、いたく感じますねえ。

さて、言いたい事を言った所で取り敢えず第1回は終わりなのだけれど、これをご覧の方の中にはもしかしたら「で、結局対岸のモンスターが出現するのは何でなのかっていう理由は説明しないのか?」と思われる方もいるかもしれません。が、あくまでもここで語るのは「愚痴」なので、そういった事については全くもって語りませんよ。そんなのは「妄想」の方に任しとけばいいんです。あっちでこの話題が触れられる事になるのがいつになるかは知らないけれど。


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