第15回 消える給料

思うに、スコールは常々感じていたのではないか。金の流れがあまりに不明瞭だ。こいつらの金は一体何処へ保管され、そして何処へ消えているんだ、と。
こいつら、とは勿論自分がリーダーである所のパーティーに属する面々達の事である。キスティス、ゼル、セルフィ、リノア、アーヴァイン。今回はこの中でも、同じバラムガーデンに属しているキスティス、ゼル、セルフィの三人についての話である。

キスティス、ゼル、セルフィ、そしてスコール。この四人の共通点とは何か。それは彼等がバラムガーデン所属の特殊傭兵部隊SeeDであるという事である。このSeeD、学内に訓練の為の施設が設けられている程のバラムガーデン内でも特に高い能力を擁する生徒によって構成されているもので、方々からの派遣依頼に対して少数の人員を送り任務へとあたる事を基本的な活動としている部隊である。ガーデン生である以上SeeDは学生という事にはなるが、派遣先はあくまでも本物の戦場であったりする訳で、彼等は完全にプロとして各種任務をを請け負う身である。そしてそんな彼等には、ある一定の期間毎に各々のSeeDランクに準じた給料が支払われる仕組みになっているのだ。年齢的には二十歳にも満たぬ学生でもプロはプロ。バトルのスペシャリストたる彼等に対してのそれは当然の対応とも言えよう。そうして得た給料を、彼等は今の、そして先々の任務を遂行する為の資金とするのだ。
勿論、スコール達とてそうだった。必ずや多少なりのリスクを伴える実戦によっての実入りとは違い、定期的に入る一切のリスクのない確実な収入というのは少なからず彼等の旅を潤わせただろう。だからこそ、スコールは常々感じていたのではないか。仲間内の間に流れる不透明な金の流れを。
SeeDランク如何によって500〜30000ギルが支払われる給料体制であるが、これはあくまでもSeeD個人に支払われている給料なのであって、スコール率いるパーティーにいる都合四人のSeeD全員分の給料がまとめられているのではない。何故ならば、全SeeD任命の段階で決定されたSeeDランクが、その後キスティスのパーティー加入によって変動したりする事がないからだ。あくまでもゲーム内で画面上に表示されるのは、スコールのSeeDランクなのであり(だからこそSeeD筆記試験の受験資格もスコールのレベルを基準に判断される)、スコール個人に支払われている給料なのだ。SeeDでないリノアやアーヴァインの行動がランクに反映されたり、ガルバディア軍ミサイル基地でのセルフィ一行の行動如何でそのSeeDランクが変動する所からすると、ランクの上下についてはパーティー全体の連帯責任制が敷かれている様であるが。

ここまで言えば、貴方にもスコールの感じていた不満が実感出来よう。即ち、ゲーム内で定期的に給料が支払われているのと同様にして、キスティス、ゼル、セルフィ、この三人にも幾許かの金がバラムガーデンから支払われている筈なのである。その金は一体何処にあるのか、という事なのだ。
これも何の因果か、リーダー等という地位に就いてしまった事が彼にとっての運の尽きであった。一定距離を移動する毎に得られる収入は、その全てが各種アイテムの購入費、武器の改造費、レンタカー、列車等の移動費、ホテルへの宿泊費といった旅に必要な経費の前に見る見る内に削り取られていく。時にはカードクイーンにカードゲームのルールを広めてもらうとかいう趣味紛いの出費すら自分の財布からの支出となる。何故なら、他の三人のSeeDは頑として金を出そうとはしてくれないから。
リノアとアーヴァインについては、そもそもまとまった収入があるのかどうかも怪しいもんだからまだ金を出さない事については不問としてもいい。他の三人の中でも、バラムガーデンに来るや否や学園祭実行委員会を立ち上げ学祭開催の為に活動してたり、何よりトラビアガーデンの復興にも尽力しているのであろうセルフィもまあいいとしなくてはならないだろう。キスティスについては色々言ってやりたい所だが、如何せん現在のSeeDランクが分からないだけに正確な収入額が判断出来ない。何かとうざったい教師でもあるし、ここは下手に触れない方がいいな。
だがゼルよ、ことお前について言えば実地試験の時から行動を共にしていた訳だから、殆どスコールと同じだけのギルを得ている筈だろう。お前、どういうつもりだオイ。まさかそのギル、Tボードだのいう訳の分からん玩具とかガーデンの昼食とかで殆ど消えてるんじゃないだろうな。もしその口からあの三編み女だかとの交際費なんて言葉が漏れ聞こえようものなら即座に叩き斬るぞ。あ? 親への仕送りだ? 馬鹿言え。親へ仕送りするなとは言わんが、それで全額が消えてしまう訳なかろうが。

つーかゼルよ、お前さあ、殆ど自分の肉体が武器みたいなもんなんだから、そのグローブ改造する必要なんてないだろ。これからお前の武器はずっとそれな。文句があるんだったら自費で改造しろ。
万一それでバトル要因としては活躍出来なくなってしまう様だったら、これからお前うんちく要因な。お前みたいな奴は特に役に立つでもない情報を喋ってくれてるだけでいいんだよ。ずっと黙ってるってんならそれに越した事はないけど。何しろさあ、ティンバーのTV局に乗り込んだ時、誰かさんのせいで自分達がガーデンの人間であるって事を知られちゃったからさあ。
オイ、財布出せよ。金持ってんだろ。


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