第6回 怪物は充足する

「チャンバラ」なんてミニゲームがFF9にはあるけど、これには苦労させられたね。一応簡単に説明しとくと、オープニングイベントの演劇内において、ジタンとマーカスがチャンバラを演じるシーンで、マーカスの指示通りに動くっていうゲームで、その出来によって観客からそれ相応のおひねりが貰えるシステムなんだけれども、とにかくこれに苦労した。
私の反射神経っていうのが一般的な能力と比べてどれ程のものであるかは知らないけど、FF10-2の「避雷搭調整」で七番の避雷搭を何とか調整する事が出来るからまあ悪かないって所だと思うんだ。にも拘らず私がこれに苦労させられた理由、それははっきりしてる。出来栄えによる賞品の設定だ。
さっきも言った通りこのミニゲームでは、挑戦を終えた段階での観客の反応に応じたギルが頂戴出来るんだけど、それとは別に、後々スタイナー操作時にブラネから貰えるアイテムにも影響を及ぼすんだよね。この「満足した観客数に応じた賞品」の設定がさ、何と言うか…あざといんだねー。
この時貰えるアイテムの内で、最高ランクに輝いているのは何と「ムーンストーン」 ゲーム全編を通しても実に四個しか手に入らない貴重品だ。そんな希少なアイテムを、何かとウダツの上がらないスタイナーにポーンと気前良く上げてしまうブラネ女王のきっぷの良さには不覚にも感動させられてしまいそうだけど今回私が言いたいのはそんな事じゃないからそれはおいておくとして、そうとなると私としてはそれを手に入れたくもなるというもの。ただ、その条件がちょっとばかりあざといのさ。何と、この度お集まり下さった実に総勢100人の貴族&ブラネを一人残らず満足させなきゃ貰えないらしいんだ。
いやね、そりゃまあ、幾らブラネが一国の女王だからって言ってもだ、「やっぱりそれだけ満足してないとあんな貴重品をおいそれとあげたりはしないよな」っていうのは分かる。でも101人の客を全員満足させろっていうのは、現実に考えるとおよそ不可能な事だと思いはしないかい? 人間の感性なんて十人十色、千差万別なんだ。人間100人も集まれば、その全員に通じる共通項なんてものは殆ど無いんだよ? そんな中で一人残らず満足させろってんだから、無茶な事を言うもんだよなあ。演者はどいつもこいつもプロの舞台俳優だとかアクション俳優だっていう訳じゃないのに。

しかもこれ、タチが悪い事にオープニングイベントのこの時しか挑戦出来ないんだよね。アンコールに応え続けてる限りは延々とプレイ出来るけど、一旦ゲームを進めちゃうともうそれ以降チャンバラの機会なんてなくなっちゃう。だから私は躍起になっちゃうんだね。「おいおい、これまだオープニングだろ? だのに何でもうこんなに時間経っちゃってんの」って言われる位に奮闘しちゃうんだね。
でも何度も言うけど難しいんだよ。序盤は△と×が主で、次第に方向キーが出て来始めて、最後には○、□も加わるっていう流れがある点については、さながらマーカスが徐々に徐々に盛り上げようとしている様で私としても評価せざるを得ないけれどもだ、←もしくは→で立ち位置を変えた時の、次の指示が出る早さは納得がいかないよ。あの時だけ次の指示を言うタイミングが早くなるから、そこでリズムが狂わされて入力ミスを誘発するんだろう。これは私の反射神経が悪いせいじゃないって、完全にマーカスの責任だって。

ところで、一つ気になったんだけどブラネって、あの時舞台を観劇していた100人の貴族達と比べると随分満足するかどうかの判断基準がズレてないかい? そりゃ、ま、確かにさっき感性は千差万別だとか言ったけどさ、それにしたって一人離れた所にいる気がしないでもないぞ。
何を言ってるかっていうと、100人の貴族の方は「失敗しないかどうか」と「どれだけテンポ良く、間を空けずに動くか」の二点を判断材料にしているのに対して、ブラネは「失敗しないかどうか」だけしか見ないんだよね。つまり、マーカスの指示通りに動いていさえすれば、個々の動きの間にいちいち空白があって、どう見ても「練習風景」にしか見えない演技であっても、100人の貴族達はともかくとしてブラネは満足してくれるって訳だ。その点、ブラネは一見こういうお芝居を数多く見てきたと思われ、演技に対する目が相当肥えているから評価も厳しいんじゃないかと思ったけど、その実100人の貴族の方がよっぽど厳しいって事になるんだね。
まあさ、ブラネ女王なんてのはさ、舞台上にジタンやらガーネットやら、それに留まらずスタイナーすらも出て来て芝居がぐだぐだになってすら雄叫びを上げて泣くってんだから大体にして芝居を見る目が無いんだろうね。だからまあ、チャンバラの動きが全くもって円滑なものじゃなかったとしても、その「型」さえ合っていれば満足するって事か。あれ、でもマーカスの指示を一回でもとちったらそれ以外の動きが幾ら完璧でもブラネは満足してくれないのか。やっぱり演技に対する評価が甘口なのか辛口なのかよく分からんなあ。実際、貴族100人中81人が満足している中でブラネが満足しない事もあれば、同じく100人中満足したのが64人しかいなくても、ブラネも満足してるケースはあるし。ブラネさんよ、そこの所をはっきりして下さいよ。

ただ、世の中上には上がいるもんだ。ブラネみたいな人間が一丁前に芝居を見ている一方で、100人の貴族達の中にはジタンがマーカスの指示をしくじり倒そうが絶対に満足してくれる客が一人いるんだから。多分あれは同じ人なんだろうね。計49回あるマーカスの指示を全部無視して、ジタンが49回尻餅をついても満足してくれる人っていうのはそうそういないよ。どんだけ甘口なんだっての。
思うに、その人毎日が楽しくて仕方ないんじゃないだろうか。何せ何でも楽しめちゃう人だからさあ。
でもだ、どんな演技にも満足するその反応は時に演者を駄目にしちゃうだろうから、もうちょっと厳しい姿勢を取った方がいいと思うぞ。あまり甘やかさない様に。


戻る  トップページへ


ラシックス