第7回 お呼びでない

「よびだす」というアビリティがある。召喚士のジョブをマスターした時に覚えるアビリティである。このアビリティの効果とはこうだ。「修得している召喚魔法の中からランダムで一体を消費MP0で召喚する」
このアビリティが使えないのだ。「ランダム」じゃあダメじゃないかと、そう言いたくなってしまうのだ。召喚士のジョブをマスターする頃なんてのはもうゲームも終盤に近い頃だろうに、そんな中でこんなにギャンブル性の高いアビリティなんて使っていられないってのが本音じゃないか。
召喚魔法もピンからキリまで合計15種類もあって、中には「バハムート」みたいにどんな敵にも有効な万能召喚獣もいるにはいるけど、片や「チョコボ」もしくは「シルフ」或いは「レモラ」みたいなちょっとどうしようもない奴等もいたりする訳だ。つーか言ってしまえば「チョコボ」だの「シルフ」だのに限らなくとも、ゲーム終盤ともなればレベル2とか3の面々も殆ど役に立つとは言い難くなってくるんじゃないのか。そうなるとそれもうハズレくじばっかりって事になるんじゃない。そんなアビリティ好き好んで使うのってあれでしょ、平凡な日常が物足りなくて、何かと刺激を求めてる様な人くらいなもんでしょ。普通なら使ってらんないよ。
「万が一MPが尽きた時の保険として」なんて事で、貴重なアビリティ枠をこれに割く人が果たしていたもんかねー。それだったらもっと有用なアビリティがあるだろうって、私は言いたいね。「よびだす」セットするくらいなら「とんずら」セットしてなさいよと。「よびだす」セットするくらいなら「ちけい」セットしてなさいよと。言いたくなるんだね。

実際に「よびだす」を使って召喚獣を召喚する時の事を考えてみようか。思いもよらない強敵の前にMPが枯渇して、って、終盤にそういった状況になる事自体が既に稀な出来事なんだけど、とにかく苦肉の策として「よびだす」を使ったとする。

「『バハムート』が出て来れば…『バハムート』さえ来てくれれば…!!」

そう思う君の前に無情にも現れるんだね、「シルフ」が。呼び出されたとあっちゃあ「シルフ」だって全力でお仕事を果たすんだけど、それによる最大HPの1%にも満たないだけの回復が、その後のバトル展開に大きな影響を与えるなんて事は残念ながらないんだ。「ピロリロリロピロリロリロ」とかいう音すら腹立たしい。つーかね、「よびだす」なんてアビリティ使うんだったら「まほうのランプ」の一つでも持ってさ、それ使いなさいよ。
或いはだ、もう打つ手がないって時に、最後の手段として「よびだす」を使ったとする。

「運良く『オーディン』が来れば『ざんてつけん』で一網打尽だ…!!」

ね、期待するのは結構だけども、そんな奇跡は起こってはくれないよ。君の前に現れるのは「カーバンクル」ですハイ残念!! こんな時にリフレク状態になった所でどうすればいいのか。回復すらおぼつかなくなっちゃったじゃないか。君はその時思うんだ。「『カーバンクル』なんて取るんじゃなかった」って。大体にして使い所の殆どない存在なのに、よもやこんな場面で足をすくわれる事になろうとは、ねえ。

繰り返す事になるけどゲーム終盤ならもうMPが尽きるなんて事態に陥る事も殆どなくなるんだから、一見大きなメリットに見える「消費MP0」ってのも実は言う程素晴らしいもんでもなくて、それでも「消費MP0」にこだわりたいのなら「ものまね」なんていう更に強力なアビリティもあるしね。特に「ものまね」だったら好みの召喚獣を使い放題ときた。そういう状況にあって、もう「よびだす」というアビリティにわざわざ使ってみるだけの価値はないというもんだ。
あれじゃないかな? このアビリティはもしかしたら、ごく普通のプレイに飽きたプレイヤーが「『呼び出す』オンリープレイ」なんていう常軌を逸した暴走行為の為に存在しているアビリティなんじゃないのかな?


戻る  トップページへ


ラシックス