第9回 空気を読め

一般に、最近のゲームに比べ一昔前のゲームは難易度が高いと言われる。実際ファミコン時代のゲームを見ると、私の知る範囲ではRPGにしろアクションゲームにしろ今とは比べ物にならない程の難しさを誇るものが目白押しだ。そしてその風潮は、FFをして例外ではない。FFも、ファミコン時代のものは今よりも遥かに難しかった。今回はその「ファミコン時代のFF」の中から、記念すべき第一作、FF1についての話をしたい、もとい愚痴をこぼしたいと思う。

一言に「難しい」とは言うが、勿論今やDQと並ぶ二大RPGとしてその名が挙がるFFの事だ、言う程理不尽に難し過ぎた訳ではない。もしプレイヤーの殆どがクリア出来ない様なゲームだったとしたら、今の様に市民権を得るなんて事は起こり得なかっただろう。確かに比較すれば十分難しい部類には入るが、しかしゲーム開始時のジョブ選択で「白魔術師+黒魔術師+赤魔術師+シーフ」とか、「シーフ×4」とかいう風な誤り方をしさえしなければ誰だってそれなりにゲームは進めていける。
が、しかし、そうして順調に進んでいくプレイは、シナリオも中ほどを迎える頃に突如として様相を変えてくる事となる。それまでだって多少難しめに感じるであろうその難易度は、プレイヤーが土のクリスタルの輝きを取り戻した後、船で南東にある大陸、クレセントレイクのある地へ上陸した正にその時、大きく展開する事になるのだ。
ファミコン版にしろ、WS版にしろ、PS版にしろ、GBA版にしろ、或いはiモード版であるにしろ、とにかくFF1をプレイした事のある人なら分かる筈だが、クレセントレイク近辺に出現するモンスターがやけに強い。明らかにそれまで現れていたモンスターの比ではないのだ。
仮にもこちとら、アースの洞窟を苦労しつつも突き進み、奥に待っていたバンパイアや土のカオス、リッチを倒した経験のある戦士だぞ。戦いにかけてはようやく少し自信が持て始めてきた所だったんだ。実際ここまで来れたのは決して伊達やハッタリなんかじゃない。なのにどうだ、あいつらの凶悪さといったら。正直あまりにすぐHPが削られちゃって、プレイする気すら無くしかねないじゃないか。

クレセントレイク周辺に出現するモンスターの中でも、カヌーに乗って進む川で出会う奴等の凄まじさったら特に酷い。ピラニアだ、レッドピラニアだ、クロコダイルだホワイダイルだヒドラだ、果てにシリーズお馴染みのオチューだのしかもその上位モンスターにあたるネオチューだの、こういったモンスターが現れる訳だけどその全てが凶悪。全てが強い。
大体何で初めて出て来るピラニアとかクロコダイルとかオチューと一緒にその上位モンスターも出て来るんだっての。お前等の出番はもうちょっと後だろー？ せめて北の大陸に現れときなさいよ。あんた達におられちゃあピラニアとかの立場がないってもんじゃないの。
でだ、そういう空気とか流れを全くもって読めてないモンスターのせいで、こっちは未曾有の苦労を強いられる羽目になるって訳だ。主人公達はカヌーに乗ってまずグルグ火山へ向かう事になるんだけど、初めて行く時なんかは面白い位にHPと魔法使用回数が減っていっちゃって、グルグ火山にようやく着いた頃にはもう魔法を使い切っちゃったりなんかする事も珍しくない。唯一、そこはまだフィールド上だから「テント」とか「コテージ」とかを使えるっていう救いがあるにはあるけど、こんな状況じゃこれから長いダンジョンをいざ攻略するって気にはお世辞にもなれないよねえ。外でこれだぞ、「テント」とかが使えなくなる中じゃどうなっちゃうんだ。ま、やってみると意外に行けたりするんだけど、でも今私が言ってるのはあくまでも気分とか気合いの問題である。
さて、そうして南東の大陸でファミコンゲームの理不尽さという洗礼を受けたプレイヤーだけど、驚く事にグルグ火山を攻略する頃にはそれなりに相手出来る様になってしまう。それだけグルグ火山で苦しんだのか、或いは並居る強敵に感覚がマヒしてしまったからなのかは分からないが。
しかし、だからと言って安心してはいられない。プレイヤーには引き続き、石化攻撃が驚異的なコカトリス、平然とデスを唱えるダークウィザード、マヒ効果の「マインドブラスト」と即死攻撃のコンボが悪質過ぎるマインドフレイア、「ふぶき」が酷く厄介なウィンターウルフにホワイトドラゴンというもう難敵だらけの氷の洞窟が待っているのだ。ここでの理不尽極まりない全滅劇を目の当たりにした時、プレイヤーは真にやるせなくなる事だろう。つーか、私がやるせなくなったんだって。「もうちょっとで」っていう所での全滅とか、「ふゆうせき」の取り忘れとか、もうあれは思い出したくもない。

つーか、FF1がWS、PS、GBA、iモードへと何度も移植される中で、ここらへんの事が殆ど変わっていないって事はだ、つまりそれってこれが何かの間違いとかじゃなくってある程度仕様だって事だろう。急激に強くなるモンスターよりもそっちの方がよっぽど恐ろしいよなあ。何でこれにOKが出ちゃったんだか。