FF10-2のストーリーもSTORY Lv.4に差し掛かると、ユウナ達はスピラの人々を一つにまとめられないかという事でユウナ主役のライブを開催しようと考え、それをトーブリに相談する事になる。
そのトーブリは、ユウナ達がライブを開催したいと思っていると知るや雷平原をライブ会場として薦め、最終的にその雷平原でライブを決行する事になるのだが、ではこの時トーブリは何故ライブ会場として雷平原を選択したのだろうか。普通に考えれば、常時雨が降り続けていて、尚且つ雷も絶えない雷平原はライブ会場としてはこの上なく適していない事は素人目にも明らな事だ。このライブ自体はお金儲けが目的で行われるものでないとは言え、「スピラの人々を一つにまとめる」のであればやはり出来る限り多くの人々を集められてこそ意義があるというものなので、どう考えてもそれは一番最初に除外されてしかるべき場所の筈なのである。
それが何故、雷平原が真っ先に候補地として挙がり、しかも実際にそのままライブが開催されてしまったのだろうか。

この謎を考えるに当たっては、まず雷平原以外にライブ開催候補地として考えられる場所がどの位あるのか、それを考えてみよう。
何と言っても始めに挙げられるのは、ルカ=スタジアムだろう。FF10エンディングでの演説の他、FF10-2オープニングで実際にルブランがライブを開催している事もあり、その点で成功例があると言える。また、規模としても十分と考えられよう。
次に、ナギ平原もかなり条件が良さそうだ。規模で言えばルカ=スタジアムのそれを優に上回り、見通しや環境については雷平原のそれを優に上回っている。
最も優先するべき事項として大多数の観客を呼び込める「規模」が必要となる為、実際考えてみると雷平原の他にはこの二ヶ所しか候補として浮上しないのだが、しかしこの二ヶ所はいずれも雷平原とは比べ物にならない程の設備や環境を誇っている。その為、普通に考えればルカやナギ平原を差し置いて雷平原をライブ会場とした理由は分からないのだが、これら三ヶ所の候補地をよくよく考えてみると、そこから雷平原の、雷平原にしか無いとあるメリットが浮上したのだ。

それは発想を転換し「ライブ会場に雷平原を選んだ」のではなく、「ライブ会場に雷平原を選ばざるを得なかった」と考えれば分かってくる。ユウナ達がライブの事を持ちかけた当時のトーブリをよく思い出してみよう。そう、あの時彼は多額の借金を背負っていたのだ。その彼がライブ会場を見繕おうにも、小さくない弊害があったと考えられるだろう。
例えばルカ=スタジアム。もしもこの時開催したライブが商的行為の一環だったとするなら、幾ら相手が借金まみれのトーブリであろうが、成功しない筈のないユウナ主演のライブにスタジアムを貸し出す事をルカ側がいとう事はなかっただろう。しかし今回のライブは客から入場料等を取らない方向で考えられている為、相当の会場費がかかると考えられるルカ=スタジアムはトーブリにとって到底手の届かない代物だった訳だ。勿論それは、ユウナ等カモメ団の面々にとっても同様だっただろう。各地で大活躍しているカモメ団の事だからそれ位のお金は何とか工面すれば揃えられるのでは、と思う方もいるかもしれないが、それは甘いと言わざるを得ない。何しろカモメ団の核であるスフィアハンター勢三人の活動費の全ては現地調達によってまかなわれているからだ。そんな彼等にルカ=スタジアムは高嶺の花というものである。
そして例えばナギ平原。こちらは一見ルカ=スタジアムとは違って会場調達に資金を必要とする事はない様に思える。しかしこの場所には先客が既に陣取っている事を忘れてはならない。そう、平原の各所でアトラクションを展開している青空公司と銀色公司の事だ。勿論、元々あの場所は誰の管理下にも置かれていなかった場所の筈であるのだが、こういった事は基本早い者勝ちで事が進んでいくものである。今となっては、ナギ平原の広域を利用したいとあらば、彼等の了承を得る必要がある筈で、それには少なくない資金を要する筈だ。また、STORY Lv.5で見られる『公司PR』絡みのイベントで最終的にトーブリが公司運営に噛んでくる事を考えると、トーブリはナギ平原でのプランを始めから一つの計画として持っており、それ故ライブ会場としての候補地から除外して考えていたのではとも推測出来るだろう。
さて、その点雷平原はどうか。環境が環境であるだけにここはナギ節が訪れてから二年経った今尚特定の団体の管理下に置かれる事がなかった為、あれだけの広さを誇っていながら会場費は驚きの0ギルである。更に、十分に機能が強化された避雷搭のお陰で雷の直撃を受ける事も一応は無くなった為、これ以上うってつけの場所はなかった、という訳だ。
詰まる所、トーブリが少なくない借金を抱えていた事が一番の理由の様だ。無論、カモメ団の資金力の無さも同様にして最大の理由と言えよう。やはり、世が永遠のナギ節であろうとも、物事を動かす一番の力になるのは他の何でもなく、お金なのである。


話は逸れるが、先にも述べた通り、ルカ=スタジアムではとある人物が実際にライブを開催していた事がゲーム中から見て取れる。そう、トーブリやカモメ団にはどうしても手が出なかったその場所で、ルブランは見事にライブを決行していたのだ。
ルブラン一味がそれだけのお金を持っている事は少々信じ難い話だが、聞く所によればルブラン一味という組織の規模は相当なものの様である。恐らくはそんな一味の中に、かなりの資金力を持つ者がいたのだろう。
その点、トーブリやカモメ団は圧倒的に組織力で負けていたのだ。よもやこんな所に越えられない壁としてルブラン一味がたちはだかろうとは。
世の中、持つべきものは仲間、という事か。


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