オペライベントと言えばオルトロスの名を挙げる人は少なくないだろう。このタコは、以前レテ川において、元々はそっちからやって来たのにも拘らず、一部のパーティーメンバーに対して因縁を持っており、舞台成功を目指すロック達を何としても邪魔しようと画策している。
さて、そこで問題になってくるのは、オルトロスは舞台を邪魔する為に、舞台真上の通路に「4t」と書かれた重りを持ち込み、それを舞台上にいるセリス目掛けて落とそうとしているのだが、実際に落とそうとする際、「んが〜!予定より重い!こりゃ落とすまで5分かかるゥ!」と発言する事だ。
実際私と同様に疑問に思った方も多いだろうと思うが、「予定より重い」とはどういう事だろうか。直後のオルトロス戦でも分かる通り、オルトロスは単身でこのオペラ劇場に乗り込んで来ている。来ている筈だ。いくら何でも満足な足場の無い通路上に、落下したら一溜まりもないであろう重りが元より乗っている筈も無い。どう考えてもオルトロス自身が持ち込んだ物である筈なのに、「予定より重い」のである。
一体これはどういう事か? 今回はこれについて考察してみようと思う。

理由として考えられるのは、
  1. 重り自体が定時を迎えると急激に、もしくは定時に向けて緩やかに重くなる特殊な物質である。
  2. 重りを運び終えてから落とし始めるまでの短時間で急激にオルトロスの腕力が落ちた。
  3. 重りを運ぶだけの役割を担い、その後はパーティーに姿を見せる事無く去っていった者が存在する。
それ位だろうか。
最初の仮説はあまりにも無理がある。何の裏付けや、関連した推測も無しにそう言ったところで信じる者などいないだろう。二つ目はどうだろうか。やはり一つ目と同様、あまりにも無理がある仮説だと思うかもしれないが、実は可能性が結構あるのではないか、と思われる説なのである。
説明しよう。ゲーム中でオルトロスとは計四度戦う事になるのだが、ここで注目すべきは第三戦と第四戦だ。この二戦間は、シナリオ上極めて近い時間で行なわれるものなのだが、第三戦のオルトロスと比べ第四戦のオルトロスの能力値が一部を除いて著しく低下しているのだ。そこでまずは以下に、第三戦と第四戦のオルトロスの能力値の中から、上昇したか低下したかに関わらず、変化しているものを抜粋して紹介しよう。

 LvHPMPギル攻撃力防御力魔法攻撃力魔法防御力スピード
第三戦252200075032295715535
第四戦261700080000102031030

この通りだ。ご覧頂ける様に、体力を意味すると思われるHPや、腕力に関係していると思われる攻撃力も、恐ろしい程その値を下げている。時間的に第三戦と近い事もあり、体力を消耗したままで第四戦を迎えた可能性もあるが、それでは大幅に数値を上昇させているMPについて矛盾が生じる事になる。
ただし、実際にゲーム中でオルトロスを見た人なら分かると思うが、オルトロスは非常にふざけた性格をしている。後になる程パーティーに対して本気で向かって来るのだが、初めて対峙したあのレテ川では、間違い無くからかい半分で近付いて来ているだろう。その為、同様にふざけていたオルトロスが、故意に本気を出さなかった事も考えられるが、これではある点でまたも矛盾が生じるのである。
その点とは、第四戦の途中からバトルに参加するテュポーンの存在だ。もしもオルトロスがふざけてパーティーに向かって来ているのなら、万が一ピンチに陥っても今までの様に逃げてしまう事も出来た筈だ。しかし。この時はオルトロスが“大先生”とまで評するテュポーンを連れて来た。これは、オルトロスが本気である事を表しているものなのではないだろうか。それに、確かにオルトロスはふざけてはいるものの、それまで三回あったバトルでこちらの強さは知っている事だろうし、オルトロス自身も、こちらが全滅するまでその攻撃の手を休める事は無い。以上の点より、第四戦のオルトロスには手加減をする必要、そして理由、更には手加減していたという証拠が何処にも無いのである。

結果として第四戦は、テュポーンの“はないき”によってパーティー全員が戦線離脱する事により幕を閉じるが、その時点までにオルトロスを倒す事は可能である。その上で、そのしばらく後(世界崩壊後)、パーティーとオルトロスが出会う事があるにも拘らず、オルトロスは戦意を露わにしない。この事こそ、オルトロスが第四戦の時点で本気を出したのに歯が立たなかった事を如実に表しているものに他ならないのではないだろうか。
つまり、第三戦が本気であったかはどうあれ、と言うか実際のイベントを見る限りどう見てもふざけていたと思うのだが、それがどちらであろうが、第四戦では本気だったオルトロスのHPや攻撃力、それに当たる体力や腕力は、実際に低下していたとしか考えられないのだ。
更に、レテ川での第一戦と問題のオペラ劇場での第二戦、それぞれのオルトロスの能力値を調べてみると、Lvを始めとする殆どの能力値が増加しているのだが、HPと攻撃力を見てみると、何とわずかながらだが減少しているのである。これはもはや偶然とは言い難い。これらの点から推測するに、オルトロスは、自身でもコントロールの行き届かない部分で、各種能力値が大幅に増減を繰り返すという特殊な体質なのであろう。オペライベントの時点では、HPと攻撃力が低迷時期に入ってしまっていたのだ。とすれば、あの「予定より重い」発言も、また異なる解釈をする事が出来るだろう。あの発言は、「予定より(重りが)重い」では無く、「予定より(腕力が低下していて)重い」という事だったのだ。
自身ではコントロールの効かないであろう腕力に加え、オペラ開演の時間はオルトロスには変更出来なかった訳だから、いよいよだ、という時点で重りを落とすのに5分かかってしまう程に腕力が落ちてしまう事は、最悪の結果としてでも予測は困難だった筈。万が一予測範囲内であったとしても、結局のところ対処は不可能だっただろう。

しかし、これでは一つの矛盾点が残ってしまうのである。それは、オルトロスが、オペラを邪魔しようと画策し、舞台上方の通路に「4t」の重りを運び込んでから、実際に落とそうとするまでの短い時間に、それ程まで急激に腕力が低下する事があり得るのだろうか、という事である。
あの重りを所定の位置まで運び込むという作業は、恐らく相当大変なものだ。腕力低迷期に入っていると思われるオルトロスが、画面上一ブロック分の距離だけ重りを動かすのに、5分かかるのだ。その上、普通に重りを押してその場所に運び込もうとしても、途中にあるドアにはロックがかかっているので、それは不可能。となると、一階部分から持ち上げて運び込まなければならなくなる事になる。その場合は、押して行く場合とは比べ物にならない程の力を必要としてしまう。それ以前に自身が浮いて行かなければならない為、これを実行できる可能性は無いと言えよう。万が一その問題が解決出来たにしろ、直後には相当の腕力低下が見られているオルトロスに、直前までそれ程の腕力があった事は納得し難い。
が、この謎を解く鍵はあった。それは、先に、重りが「予定より重い」という事実に対し、考えられるものとして立てた仮説三つの内の最後の一つの「3.重りを運ぶだけの役割を担い、その後はパーティーに姿を見せる事無く去っていった者が存在する」であり、先程二つ目の仮説の途中に、第四戦のオルトロスが本気であった事を証明する時に登場したテュポーンなのである。恐らくは、このテュポーンが重りの運び込みを手伝ったのではないかと思われるのだ。

まず、オルトロスとテュポーンは、第四戦で共に登場するよりも前からの知り合いの様だ。オルトロスは、古くからレテ川に生息している事が知られている。一方のテュポーンは、「川に生息する魚の一種」との記述がある。これはオルトロスとテュポーンが以前から共にレテ川で暮らしていた事を指し示しているとも考えられる。また、第四戦後、オルトロスは「竜の首コロシアム」で受付の仕事をしているのだが、このコロシアムには、オルトロス曰く「しょうもないアイテム」を賭けた時に、テュポーンが登場するのだ。ちなみに、オルトロスがコロシアムで働いている理由は、コロシアムの支配人によると、多額の借金の返済を滞納しているからとの事らしい。恐らく二人は、世界崩壊によって故郷レテ川が消失してしまい、帰る所が無くなってしまった事により、詳しい目的や理由は不明だが、多額の資金を必要としていたのだろう。まあ、元より返済するつもりがあったのかどうかも疑問だが。支配人の話では、借金を完全に返し切る為には百年程かかるそうである。が、ブツブツと愚痴を叩きながら働くオルトロスと、挑戦者を“はないき”で否応無く次々と吹き飛ばしてしまうので、勝敗が着い たとしてカウントされず、結局挑戦者が賭けたアイテムの殆どを返却しなければならなくなっている状態のテュポーンの役立たなさ加減を見ると、彼等が借金を返済出来るのは百年先どころではないと思われ、踏み倒すのも時間の問題ではないだろうか。
話を戻す。まあ大体そんな感じではありながら、確かに二人は、以前から知っている間柄なのである。オルトロスがテュポーンの事を“大先生”と慕っている発言をする事から考えれば、恐らく彼等は師弟関係に当たるものなのだろう。まあ、どこか世渡り上手そうなオルトロスが、あからさまに下手下手に出ているだけかもしれないが。そんな「大先生」テュポーンが、他ならぬオルトロスの頼みによって「4t」の重りをわざわざ運んで来る事は、十分考えられる事なのだ。
ちなみに、テュポーンの攻撃力は13、これは、オペライベントでのオルトロス戦のオルトロスの攻撃力と全く同じである。これじゃあ「五十歩百歩」、「どんぐりの背比べ」、などとのたまわれる人々が出て来るかもしれない。事実それは五十歩も差のついたものではないし、何だかんだ言って若干の差はあるどんぐりに例えてはいけないものである。
しかし、テュポーンには「はないき」がある事を忘れてはならない。そう、たかが「はないき」だからと言って侮ってはならないのだ。テュポーンの「はないき」は、ゲーム中では、最多で三人の人間を、軽々と、しかも連続で、更に狙った位置に正確に吹き放つ事が出来るのだ。これを重りに対して、しかも一息全ての風力をそれに向かわせたとすれば、その威力たるや想像を絶する筈、絶するであろう、絶しなければならない。更に、魔大陸突入時イベントを見ると分かるのだが、テュポーンは浮遊する事が出来るので、吹き飛ばした重りを定位置に持って行く為の微調整もきくだろうし、オルトロスを舞台上部通路まで持ち上げてやる事も出来る。
また、突拍子も無い話かもしれないが、確かに重りには「4t」と書いてあったものの、本当は4tもなかった可能性も考えられる。実際あの細い通路が、このイベント後も、少なくとも一年近くそこにあり続ける4tもの重りに耐えられるのか? と考えれば十分あり得る話ではないだろうか。

以上が、「予定より重い」為に「4t」の重りを落とすのに5分かかってしまったオルトロスの、重りを持ち込んだ方法と、重りが予定より重くなってしまった由縁の全てである。


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