「ここほれ!チョコボ」について。メネは、チョコがジタン達を御主人様として認めるや、早速とばかりにこの話を持ちかけてくる。その内容は、60ギルを支払えば、一分間、チョコの持つ"お宝を探して掘り当てる能力"をチョコボの森(後に入り江と空中庭園が追加)の中で使わせてくれる、というもの。メネはこれを"商売"と称しているが、その点で問題になるのは、制限時間内に一定数お宝を見つけ出した際に、「これ以上見つけられたら商売にならない」といった感じのセリフを言う事だ。
つまりこの「ここほれ!チョコボ」には、何らかの費用がかかっている事になる。チョコボの能力に関しては、基本的に無尽蔵に使えるものであり、この能力を啓発する為に管理費等を要する事はないはず。となれば考えられるのはそこに埋まっている数々のアイテムを調達する費用と、後はメネとチョコの食費くらいか。ちなみにその場合、モーグリであるメネは果たして普通の人間が食べるような物を主食とするのか?といった疑問が発生するが、これは、マダイン・サリで発生するイベント「エーコのお料理」で、エーコがジタン達に自分の手料理を振舞おうとする際、エーコはモーグリの分も作っているので、モーグリもほぼ人間と同じ物を食べていると思っていいはずだ。

さて、食費について、まずチョコの場合を考えてみよう。チョコの主食は何だろうか。ここでは、ゲーム中で、御主人様に当たるジタンがギサールの野菜を差し出すと、たとえ世界の何処にいようが一瞬で飛んで来る(場所は限られているが)事を考えると、やはりギサールの野菜だろう。このギサールの野菜に関しては、お金さえあればメネがいくらでも売ってくれる事を考えると、恐らくタダに近い値で大量のギサールの野菜を仕入れる事が出来るルートを持っているのか、もしくはあのチョコボの森に豊富に育っている事が考えられる。どちらにしろチョコの食事については特に問題としていないと思われる。
メネについても、妖精という特殊な生態系上、普通の食事もするが、特に何も食べなくてもいいとするなら、そうでなくても、チョコと一緒にギサールの野菜を主食としていると仮定するなら、食費については問題なくなる事になる。

しかし、埋まっているアイテムに関してはどうしても謎が残ってしまう。埋まっているアイテムを見ると、前述した通り、大量に所持しているギサールの野菜に関してはまあいいが(自然に埋まっている可能性もある為)、数ある中から最も発掘し易い分類に分けられるアイテムを見ても、ポーション、毒消し、目薬等、これらでも実は通常の店で購入すると単価50ギルであり、一回一分間60ギルではどう考えても元が取れない。しかも高ランクのアイテムでは、フェニックスの羽等といった非売品や、普通なら材料費の上に合成費もかさむアクセサリー類も多く、時には現金で10000ギルがそのまま埋まっている事もある。その上、掘り出したアイテムにより規定のポイントが加算され、いくらか溜まるとそのポイントを、これまた希少価値の高いアイテムと交換してくれるのである。
これを"商売"と言うのなら、損得勘定で言えばどう考えても大損だ。普通に考えれば、アイテムを一つ掘り出された段階でもう既に10ギルしか得にならない、という極めて利益率の低い商売である(ごくたまに1ギルが掘り出される場合があるが)。しかしメネは、ジタンがアイテムを八個掘り出した時点でようやく止めに入る。その時のセリフからしても、八個までなら商売になるという風にしか聞こえないのだが……

ここで一つ推測出来る事は、先程ギサールの野菜の話で出てきた、格安で大量の物資を入手出来る裏のルートがあるのではないか、という話。運を基軸にした商売である以上、ある程度"損をする可能性"は計算に入れておかなければならないが、かつ、全体を通して見た時に利益が出ていなければならない。
この"ある程度の損"をどんなに多く見積もり、"最終的な利益"をどんなに少なく見積もったとしても、ポーション等のアイテムに関しては7ギル以下。非売品のエーテルやエリクサーも、2000ギルを切る程の破格の値で仕入れなければ話にならない。とは言え、メネにとっては話になっている様なので、これらのアイテムをこれくらいの値で仕入れているに違いない。
そこで浮上するのが裏ルートの話なのである。しかし、裏ルートが存在するかどうかを確かめる術は無く……あったならあったでこの疑問は決着する訳で……無かったら無かったで結局ただの大損だったんじゃないの?なんていう結論が出るんじゃないかと……思っていたら、私はここでとてつもなく恐ろしい推測を立ててしまった。


この先は裏ルートがあるものと仮定して読んで頂きたい。
皆さんはFF9にヴァイス、及びマジックヴァイスというモンスターが登場する事をご存知だろうか。前者は霧の下のリンドブルム嶺、後者はブルメシアに登場するのだが、このモンスターの特徴は、相手のアイテムを盗んで、次のターンに逃走するというものである。一度でも逃走された日には一生恨みたくなる程で、実際そうである人も多いのではないだろうか。
過去のFFシリーズでも同様のモンスターはいくらか登場していたので、何の気なしに闘っていたのだが……もし、あそこで盗まれたアイテムが、ジタン達に限らずあの辺り一帯にいる冒険者達に襲いかかって得た数々のアイテムが、裏ルートとしてメネに渡っているとしたなら……そう考えれば、確かに裏ルート側のアイテムの仕入れ値は全くのタダであり、あの破格の値段も成立してしまうのである。しかも前者であるヴァイスの出没地帯は、チョコボの森に近いところに位置している。これは果たして偶然なのだろうか?
更に私は驚くべき事に気付いてしまった。ヴァイス、及びマジックヴァイスに盗まれたアイテムは、その後逃走される前に倒したところで戻って来ない。あのアイテムは一体何処に?と思う人も多いはず。
しかし、思い出して頂きたい。ジタン達が苦労の末、初めてチョコボの空中庭園、そしてチョコボの桃源郷に足を踏み入れた時、そこには時を同じくしてその場に足を踏み入れたメネの姿があった。

「そろそろ見つけるだろうと思ってついて来た」

これはチョコボの桃源郷に入った時のメネのセリフを簡略したものであるが、果たしてそんな事が、そんな偶然がありえるだろうか、軽い感じで喋ってはいるが、言ってしまえばそれは尾行である。
しかも不審点はそれだけではない、チョコボの森、そして二回目以降のチョコボの入り江とチョコボの空中庭園の三地点には、ジタン達がどんな行動をしていようと、また、ある地点から別の地点へ、飛空挺に乗って最速のタイミングで移動しようと、そこには既にメネがいる。これは尾行どころか先回りだ。しかも我々に姿を全く見せずにである…
もしかしたらメネは、これらのテクニックを駆使し、ヴァイスやマジックヴァイスがアイテムを盗んだと見ると、すかさずそれを回収するのではないだろうか。だから盗まれたアイテムが帰って来ないのだとするなら…
もしそうだとすると、単に盗賊団ルートから安価でアイテムを仕入れているのではなく、メネを中心として大盗賊団が動いている可能性も考えられる。いずれにしろメネと闇の大盗賊団とのつながりがある疑惑は尽きない。
それどころか先程の尾行や先回りの件を考えると、我々はいつもメネの監視下に置かれている可能性さえある。
冒険者達から巻き上げたアイテムを、さも「自分が損をする位こっちは無理をしているんだ」と思わせたいかの様な格安の値段設定で相手にお得感を持たせ、ジタン達からギルを頂戴するメネ、確かに憶測に過ぎないが、見た目が可愛いからといって油断してはいけない。その裏では、自らの手は全く汚さずに目の前の大金にほくそ笑む真実の姿があるのかも……

となれば、次の疑問は、チョコの真意である。メネが極度の悪人である事は周知の事実。しかしチョコはどうだろうか。ただ単にメネに騙されているだけなのか、もしくはメネとグルになって金儲けを企てているのだろうか。
メネに関しては、人間と通じる言葉を喋る事もあったので、これらの事実を突き止める結果となったが、チョコに関しては、何一つジタンの言う事に文句を言う訳でもなく従っていたり、何しろ意思の疎通が図れないのでどういう思惑なのかを知る手掛かりがあまりにも少ない。しかし、もしもチョコがメネとグルだったとすれば、まず、メネ曰く「お宝を探し当ててそれを掘り出す」という能力すらただの嘘である可能性が出て来る。
しかし決定打が無い。さすがに私はこの件に関しては真意がどうであるかの憶測を諦めようかと思ったが、この疑問、後に別の疑問を解いている途中で明らかになったのだ。


という訳で、その問題は一旦置いておいて、次の疑問。それは、ジタン達が初めて「ここほれ!チョコボ」で"チョコグラフ"(初めて見つけた時は"模様のある石版"という名称で発見される)を見付けた時のメネの言動だ。
メネは明らかに"チョコグラフ"を初めて見る発言をするのだが、その石版に描かれている模様を見るなり、これは何処かの地形である事を見抜き、そして即座に、「この場所にはお宝が隠されているに違いない」と発言するのである。
本当にそんな事があれば、そんなうまい事あるはずがない、と思うのが当然だが、実際にお宝はあったのである、その場所に。
つまり、何故メネは石版を一目見ただけでそれに気付いたのか?という疑問が発生する。
もしかしたら、あの"チョコグラフ"もメネが他のアイテムと一緒に埋めた物ではないのか?とも思ったが、それではある矛盾が生じる事になる。もしもそうであるなら、石版の示す場所にあるお宝も、メネが埋めた物で無ければ説明がつかない。しかし、"チョコグラフ"で見つけ出されるお宝の大半は、一冒険者が持っている様などこにでもある物ではなく、世界に一つしかない程、希少な武具やカード等なのだ。
例えメネが、森等に埋めているアイテムを、盗賊団を使って冒険者達から巻き上げているとしても、世界中に埋まっている様な希少なアイテムを幾つも幾つも首尾良く入手できるはずが無い。大体、万が一それが出来たとしても、そこは金の亡者メネ。タダでそれらの物を他人にくれてやる位なら、「ここほれ!チョコボ」のポイント交換の景品リストに入れて、相手により「ここほれ!チョコボ」に挑戦しようという意欲を沸き立たさせるなり、もっと直接的な方法、例えば売り払ったりするなどするはずなのだ。
それらの点から推測するに、"チョコグラフ"はやはり、古来よりあの場所に埋まっていたものであると思われる。しかし私は、ジタン達が初めて"チョコグラフ"を掘り当てるまで、メネがその存在を知らなかったとは思えないのだ。

それを裏付けるものがある。上記の通り、メネは、チョコがジタン達を御主人様だと認めると、即座に"商売"の話を切り出し始める。つまり「ここほれ!チョコボ」は、ジタン達が現れるずっと前から、メネが金儲けの為にたてていたプランだった事になる。当然その為には、アイテムを地中に埋めておかなければいけない訳だ。埋めるという事は少なくとも一度は掘り起こさなければならないはず、いくらメネといえども……
ランクの低いアイテムこそ浅い所にあるが、ランクの高いテントや万能薬は"チョコグラフ"と同等、更にランクの高いアクセサリー類はそれよりも更に深い所に埋めてある。
という事は、それらのアイテムを地中に埋める際に、メネ自身が"チョコグラフ"を見つけていた可能性があるのだ。これなら、ジタン達が見つけ出した時点では、初見ではない事になるので、一見疑問が解決した様だが、これではまた疑問が生じてしまう。
メネなら、自らがお宝を掘り起こしに行って、それこそ景品リストに加えたり、売り払ったりするのではないだろうか?というものである。
これについて、さらに憶測を深めていったところ、私はまたしても恐るべき結末を迎えるに至ってしまったのだ。


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