石版の意味に気付いたメネは、恐らく最初は完全な金目的でお宝を掘り当てにいったと思われる。まあもしかしたら推測の上でお宝を掘り当てて、石版の意味に気付いたのかもしれないが、どちらにしても同じだ。石版の示す場所にはお宝がある、その事実に気付いたメネは、手当たり次第に石版を見つけてはお宝を掘り当てていったのだろう、恐らくほくそ笑みながら。
しかし、途中でメネはある宝箱を開けた。それは、実際にはチョコが、最終的にはチョコボの桃源郷に帰る為の進化を成す宝箱だ。
果たしてそこで何があって、メネがどういった思惑を巡らせたかは定かではないが、多分これを切っ掛けにして、メネはチョコボの桃源郷の事を知ったのだろう。
ここで話は脱線するが、もしもメネがこの宝箱を、チョコを連れて開けていたとすれば、チョコは少なくとも浅瀬チョコボに進化しているはず。それがそうなっていないという事は、メネはその宝箱を、チョコのいない状況で開けている事になる。チョコを連れていれば遥かに楽に事が進むのにも拘らず、である。
しかし、後述するが、メネにはあまり体力が無い。よって、単独でお宝を掘り出す事はほぼ不可能だと思われるが、その点については、自らが率いている盗賊団を多数出陣させれば何とかなるだろう。
お分かりになるだろうか、つまりメネは、チョコに自分の本性を明かすまいとしているのだ。恐らくメネは、チョコに、自分が盗賊団のボスである事を隠し、自分の裏の顔を隠して、チョコを「ここほれ!チョコボ」に利用、つまり金儲けの道具として使っていたのだ。
つまりチョコは、全面的にメネに利用されていた事になり、メネとグルである訳では無かったのである。
それを踏まえて話を戻そう。チョコボの桃源郷の事を知ったメネは、ある思惑を思い巡らせたと思われる。それはまさしく恐ろしい計画だった。その計画とはこうだ。
まず、今まで見つけたお宝、及び石版を、元通りに埋め直す。その後、今まで通りに、「ここほれ!チョコボ」で稼ぐ為、チョコの乗り手を探す。乗り手が見付かったら、何度か「ここほれ!チョコボ」を、実践させ、"チョコグラフ"を掘り出させる。ここまで来れば、後は色々と画策しなくても、乗り手が幾度も「ここほれ!チョコボ」を実践してくれると思われるので、その都度一回60ギルの収入で自分の懐を暖めつつ、同時に乗り手のお宝捜しの意欲を更に沸き立たせる。そしていずれは乗り手とチョコの苦労の末に、自分がチョコボの桃源郷に乗り込む、といったものだ。
更に計算高いメネは、その後の展開まで計画していたと思われる。チョコボの桃源郷に到着したメネは、そこに定住し、いくらか暮らした後、盗賊団を大量動員して攻め落とし、ありったけの金目の物を持ち去ろうとしていたのではないだろうか。その際、単なる金儲けの道具でしかなかったチョコを含め、その場にいるチョコボを口封じの為に全滅させ、その後に、世界各地に隠されていた古代のお宝を一人占めにしている乗り手側をも襲い、それらのお宝を回収する手筈になっていたとは考えられないだろうか。
それだけの計画を立てたメネは、すぐさま行動に移し、その時を待ったのだろう。果たしてどれだけの時間を待ったのかは知らないが、いつもの様に冒険者達からアイテムを盗ませてはそれを埋めたり売り払ったりする日々を過ごしていたメネの前に、ある日、運命の人物であるジタンが現れた。幸運にも極度の人見知りだというチョコも、ジタンの事を気に入り、いよいよ計画が本格的実行に移される時がやって来たのだ。そんな経緯で、メネがジタンに"商売"の話を切り出すに至ったのではないかと思われるのである。
その後は驚く程順調に事は進んだ。メネは、自分がほとんど動く事の無いまま、ジタンとチョコが勝手に世界中を走り回って、チョコが進化する様を見ているだけでよかった。恐らくメネのした事と言えば、さも自分は何も知らないかの様に振る舞い、かつジタン達の行動を事細かにチェックする事意外は特に無かった事だろう。
そして順調に進んだ計画は、見事メネをチョコボの桃源郷に導くところまで進んだ。
しかし、ここでメネの計画に、初めて狂いが生じる事になる。このシーンを見た人も多いかも知れないが、本来ならここで、定住する事になるはずだったメネは、この桃源郷を統治するデブチョコボから、それは駄目だと言われてしまったのだ。
何回か食い下がるメネだったが、結局返答はダメ。結果的にメネは諦めるのだが、メネだったら、自ら率いる盗賊団をその場で総動員させる事も可能だったのではないだろうか?
しかし、恐らくここでメネは悩んだと思われる。それこそ盗賊団を総動員させる事も考えたと思われるのだが、結果として諦めるには、大きく二つの理由があったと考えられる。
一つは、当初計画を立ち上げた以降、自分の中で描いていたチョコボの桃源郷のイメージと実際の風景とは、明らかな相違があったのではないだろうか。もともと完全な金目当てで桃源郷を訪れたメネは、そこにある風景に絶句したはず。それもそうだろう、そこにあるのは、緑と水と岩と……どうみても金目の物は無さそうである。もしかしたらメネは、「いいところクポね〜」と言いながら、一目見てもう見切りをつけていた事も考えられる。
しかし、最大の理由は、ジタンにあったのだと思われる。メネは、幾度もの尾行の中、予想を遥かに越えるジタン達の実力に驚いたのではないだろうか。この者達を万が一敵に回せば、いくら盗賊団の頭数が多くても、手間取らせる事はあってもまず勝ち目は無い。
つまりメネは、自分の命を危険にさらしてまで、あまり自分に得の無い行動に出る事は得策ではない、と、極めて冷静な考えを持っていた上で、あの時定住を諦めたのだろうと思われる。
しかし、予定は狂い続ける。チョコが残る事で、ジタンがこの島から出られなくなってしまったのだ。
一応メネがジタンを持ち上げて帰ろうとするのだが、出来そうに無い。本性をひた隠す必要のあるメネが、わざと力を出さなかった可能性もあるが、ただこの提案はジタンからあったものであり、ここでジタンを平然と持ち帰ったところで、ジタンに何らかの疑惑が向けられる可能性は少なく、また、こと冷静なメネの事、それくらいは分かっていたはず。つまり、メネは本気でジタンを連れ帰る事が出来そうに無かったのだ。
さすがにメネもこの時は悩んだはず。まさか盗賊団を呼ぶ訳にはいかない、だからと言って万が一見捨てたりなんかすれば、いつか手痛いし返しが来ないとは限らない。
まあ結果的には、チョコが戻って来たので一件落着になった訳だが。もしそうならなかった場合でも、メネがリンドブルムか何処かに船を一隻要請すれば解決した事だろう。
かくして、メネの壮大な金儲け計画は、最終的な目的こそ失敗に終わってしまったが、結果、再びチョコを利用して「ここほれ!チョコボ」で金儲けの日々が続くという結末を迎える事になった。
以上がゲーム中におけるメネの行動と思惑である。
しかし、それ以前の事はどうなのだろうか。私はメネの誕生から推測してみる事にした。
私がここまでで明かしてきた数々の事柄は、どれもこれも相当の悪事である。
そこまで性格がねじれるには、幼少時代に何か重大な事件が起こったに違いない、と私は考えた。
まず、FF9のモーグリには、生殖能力がある。これはギザマルークの洞窟にいる新婚のモグタとモグミが、シナリオの進行に応じて、最後には三人の子供を授かっている事からもこれは事実だろう。
という事は当然メネにも両親がいたはずだ。推測するに、メネの両親は、メネがまだ小さな頃に、死別か、離婚か、何らかの形でメネと分かれているのだろう。それが影響して道を踏み外してしまったと考えられる。
一体それからどの様な経緯で盗賊団のボスにまで上り詰めたかは不明だが、大体メネという名前自体、その他の多くのモーグリにみられる名前の特徴が無い点を考えると、生み捨てに近い状態であったメネを盗賊団が拾って、育てられた可能性も考えられる。むしろそちらの方が大きいだろうか。
メネが盗賊団のボスに君臨してからは、盗賊達に冒険者からアイテムを盗ませては売りさばいて儲けている日々が続いていた事だろう。
そんなある日メネは、仲間とはぐれたチョコと出会い、その能力を買って、「ここほれ!チョコボ」で利用する計画を思い付き、その後計画を練るに至ったのだと思われる。
以上が、私が推測したメネの真実である。最後に今まで明らかにした事を時間を追ってまとめておこう。
・メネ生誕、間も無く両親と別れる(詳細不明)。
・経緯は明らかでないが、ヴァイス・マジックヴァイス大盗賊団のボスに。
・盗賊団を使って、冒険者から盗みを働き、それを売りさばく日々。
・チョコとの出会い。程なくして能力の事を知ったメネは、「ここほれ!チョコボ」での金儲けを思い付く。
・石版("チョコグラフ")、そしてチョコボの桃源郷の事を知り、計画を練る。
・ジタンとの出会い。チョコが御主人様と認めたので、メネも乗り手役として認める。
・計画の順調な遂行の結果、チョコボの桃源郷に辿り着く。
・計画完遂を断念、チョコと共にチョコボの森に帰る。
・盗賊団の盗みと、「ここほれ!チョコボ」での金稼ぎの日々に戻る。
今回ここに書いた内容の内、ゲーム中で実際に確認出来るもの以外は、全て憶測に過ぎない。しかし最後に、これらが真実の物語だと仮定して読んで戴きたい。
結局失敗に終わったとは言え、一時はジタンやチョコをその手にかける事まで計画としていたメネ。
しかし、その人生を見れば、そこには単なる悪い顔だけではなく、愛に飢えた孤独なモーグリの哀しみと憎しみの物語が見えて来るのではないだろうか。
メネとチョコはFF9のエンディングには登場しないので、ジタン達がラストボス戦に突入した後どうなったか、どうしているかは定かではない。だが私は、メネがチョコとの暮らしの中で有意義な感情を見出し、一日も早く今の世界から足を洗って、チョコと共に、静かに、穏やかに暮らす日が来る事を願ってやまない……
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