FFTには多数の隠しキャラが存在するが、その内の一人にFF7の主人公であるクラウドが含まれている事をご存知の方は多いだろう。
クラウドと言えば、FF7では「主人公」という名前に一歩の引けも取らない活躍を見せる。流石は原則としてパーティーメンバーから外せないだけの事はある。その手にかけたモンスターの数は他の追随を許さないだろう。果ては「超究武神覇斬」だ。その佇まいを「最強」と形容せずして何と言えようか。
だがしかし、FFTに登場するクラウドは一般に弱いと言われる。その理由は多岐にわたるがまず一つに、加入時期が終盤であるにも拘らず加入時のLvが1であるというものが挙げられるだろう。封印・制限系やり込みプレイを行っている人でなければ、その強力、凶悪さが存分に発揮されている筈で、最早それ以上の戦力を必要としなくなるであろうシドさえいてくれれば、後はこれまで恒常的にバトルに参加させてきたメンバーさえいれば十分だからだ。そこに、わざわざ成長させる手間暇をかける必要のあるLv1のキャラクターが入り込む余地等ある筈もない。
クラウドをバトルメンバーのレギュラーにしない理由としてはこれだけでも既に十分だが、実際には更なる追い討ちが存在する。そしてこの追い討ちこそ、クラウドが多数のFFTプレイヤーから非難される最大の原因であり、同時に大きな謎として立ちはだかったのだ。
その謎とは「何故FFTのクラウドは『マテリアブレイド』を装備しないとリミットが使用出来ないのか」である。FF7ではリミットゲージが溜まる限りどんな武器を装備していようがお構いなしに発動出来ていた筈のリミット技が、「マテリアブレイド」という武器を装備しなければ使う事すらかなわない。そればかりでなく、FF7ではコマンド入力から発動までに殆ど時間がかからなかった筈が、FFTでは短くないCTを経なければならなくなっている。
この明らかなる相違は何故起こったのか? 遂にそれを明かそう。
さて、上述の通りFFTのクラウドは特定の武器を装備しないと「リミット」が使えない。これこそ、FF7のクラウドとFFTのクラウドが同一の存在であると考える際、諸々のつじつまを合わせようとする時に最も引っ掛かってしまう所だ。そこでまず私は、その「特定の武器」の名称が「マテリアブレイド」だという事で、その「マテリアブレイド」から謎解明の糸口を探り始めた。
ここではまず、FFTのクラウドがそうである以上、FF7に登場するクラウドも、ある特定の種類の武器を装備しなければ「リミット」が使えない事を前提とする。即ち、マテリアブレイドとFF7のクラウド用武器との間には、FFTに登場するマテリアブレイド以外の武器には無い、決定的な共通点があるという事になる。
ではその共通点とは何か? 「マテリアブレイド」という武器名が示しているかの様に、それはマテリアの力だろうか? いや、それは違う。FF7のクラウド用武器はマテリアをはめ込む事で確かにマテリアの力を得る事は出来るが、例え一つもマテリアをはめ込んでいなかったとしても、普通にリミット技を使う事が出来るからだ。
とは言え、FF7の各種武器とマテリアは別にして考えられない関係であり、かつマテリアブレイドには「マテリア」という単語が含まれている。となれば、両者間の共通項に何らかの形でマテリアが関わっているのは間違い無いと思われるのだが…?
ここで私は考えた。両者に共通する事項。それはもしかしたら「マテリア穴」なのではないだろうか? つまり「マテリアブレイド」とは「マテリア(の力を秘めている)ブレイド」ではなく「マテリア(穴を備えた)ブレイド」、或いは「マテリア(を使用可能な)ブレイド」なのではないだろうか? その実、FF7に登場する武器にあって、他の武器に無い特徴と言えば、マテリア穴の他には取り立ててあるものではない。そこで私は、マテリアブレイドにはマテリア穴が備わっているという点で、FF7のクラウド用武器との共通点を見出した訳だ。
勿論多くの反論はあろう。何となれば私は単にFF7のクラウド用武器とマテリアブレイドとの共通点を探していた訳ではない。結果それがリミット技の使用可否に関わってくるのではという期待の下にそれを探していたのだ。その結果が「マテリア穴」とは…とお嘆きになる方もいるかもしれない。しかし、これはこれで(個人的には)説得力を持っている説なのだ、実は。
無論、そうたる所以もあるが、それは一旦おいておいて、少し話を逸らす。
マテリアブレイドと言えば、FFTにおいて唯一クラウドがリミット技を使える様になる武器でありながら、あまり強くない武器としても(恐らく)有名であり、期せずしてクラウドと共に汚名を轟かせている。これについてだが、先に述べた「マテリアブレイドに『マテリア穴』が備わっている」事を加味すると、きちんとした理由が一つ浮上するのだ。それを次は説明したいと思う。
まず、マテリア穴がある、即ちマテリアが使用可能という事は何を意味しているのか。良く言えばそれは、マテリアが利用出来る事で多くの不可能な事を可能にし得たり、本来の装備者の能力を遥かに凌ぐ力を獲得出来る、といった所だろう。しかしそれを返して言うと、装備者や武器自体がある程度弱くても、マテリアを使用出来るので特に問題は無い、という事である。
クラウドを例にとるとよく分かる。FF7の世界では並み居る強敵をバッタバッタと倒し続けてきた歴戦の猛者クラウドだが、それはマテリアの力を得ていたからに他ならない。あらゆる魔法の詠唱がそうだ。「HPアップ」や「MPアップ」等によって得た本来ならばあり得ない程のステータス値がそうだ。「カウンター」と「かばう」による凶悪極まりない斬撃の雨霰がそうだ。この様に、マテリアにすがる事でようやく「強い」と言わしめるに至ったのだ。その彼からマテリアを奪ってしまったらどうなるだろうか。即ちそれがFFTにおける彼の状況そのものである。それまでマテリアに頼り切りという温い環境にいたクラウドと、己の身体一つで数々の難関を突破し続けてきたラムザ達。この両者を比べた時、そこに明らかなる差異が生まれるのは明白というものだろう。
つまりこういう事だ。
「マテリアブレイド」という「マテリア穴を持つ武器」が何故FFTの世界に存在するのかという説は二つ。その一つは、マテリアという概念が太古の昔には存在していたらしい事から、遥か昔にはマテリアを利用していた人間がいたという事になる。即ち当時の人々は、ちょうどラムザ・クラウド間と同様に現代人と比べて身体的な能力に劣っていたという事になり、同時に武器そのものもマテリアの力があるからそう躍起になって強くする必要はないと考えていた、というものだ。言わば「マテリアブレイド」とは「マテリア(穴を備えた)ブレイド」であると同時に「マテリア(が力を発揮してくれるから)ブレイド(自体はまぁこんなんでいいよね)」だった、という感じか。
また一つの説は、クラウドと同様、マテリアの概念を持つ世界(FF7の世界とは限らなくとも)からやって来たものなのではないか、というものだ。この場合もやはりマテリアの力が存在した故に、武器自体はそんなに強くなくてよかったからこそ、FFTの世界に存在する武器と比較すると弱かった事が言える。
クラウドが、マテリアブレイドが、それぞれ隠しキャラ、隠し武器であるにも拘らず一様に弱い理由、そこにはマテリアが供給する無尽蔵の力に溺れた愚かな人間の姿があったのだ。
マテリアがあったばかりに、己の身体そのものの鍛錬を怠った人間達。否、それは単なる怠惰だったとは言い切れない。何処の街でも品物として取り扱っている程に定着したマテリアは最早バトルと切り離して考える事は出来ない為、マテリアに頼らざるを得なくなっている戦士達は、肉体そのものを鍛錬する機会を奪われてしまっているとも言えるからだ。
そんな状況にいたクラウドがFFTの世界にやって来た時、即戦力として活躍出来ないのは当然と言えよう。なのにも拘らず大多数のプレイヤーからは「弱い」の一言で切り捨てられ、見捨てられるクラウド…そう、真の被害者は誰あろう、彼だ。
さて、話を戻す。マテリア穴があるか無いかで「リミット」の使用可否が決まる位マテリア穴とは重要なものなのか? その疑念を晴らさなくてはならない。
まず一つ言おう。マテリア穴を単なる「マテリアをはめ込む穴」だと思ってはならない。
何故ならば、武器に空いている穴に、例え魔力が秘められているとは言おうとも所詮は単なるビー玉程度の大きさの球を入れるだけで、その武器に「属性」や「追加効果」が付加されるだけなら何も言わず納得出来るとしても、その武器を装備している人間が魔法を詠唱出来る様になったりするのだ。
そしてその時「それはマテリアが不思議な力を持っているからだ」と安易に考えてはならない。もしもそれがマテリアの力のみで成り立っているとするのなら、マテリア穴等というものは完全に無視し、適当な所にマテリアを幾つだろうと貼り付けてしまえば十分だからだ。「HPアップ」、「MPアップ」等も身に付けてさえいれば効果を発揮する筈だ。「てきよせ」、「てきよけ」、「チョコボよせ」といったマテリアも、ただ持っているだけで効果を発揮するべきだろう。
実際には、そんな荒業は不可能というもの。これはつまり、マテリア穴にも何か少なからず特別な力があるという事で、しかもそれがその武器だけでなく、それを装備する人間にも影響をもたらしているという事を意味している。その影響の一つに、リミット技の使用可否があったと考えられはしないだろうか。
ただそう考えたところで、まだ矛盾の完全な解明には至らない。そう、上記の考えには「釘バット」という例外が存在する。
FF7に登場するクラウド用武器の中では唯一「マテリア穴を持たない」釘バット。リミット技を使用出来るかどうかにマテリア穴が深く関わっているとするなら、この釘バットはまさしくFFTに登場する「マテリアブレイド」以外の他の武器に相当する事となってしまい、釘バットを装備して尚繰り出され得る「リミット」という点に矛盾を残してしまう。
しかし、その点に抜かりはない。何故釘バットを装備している状況において尚リミット技が使えたのかを説明しよう。
ポイントとなるのは「クリティカル率」ではないだろうか? まず一般に知られている事として、釘バットのクリティカル率は他の武器より高めであるという事実がある。
ではクリティカルとは何か。普通に説明するのなら、攻撃時に時折発生し、ダメージ量が通常に比べて二倍となる、といった所だが、そのクリティカルが発生する状況をまずは考えてみよう。
まずダメージ値が通常時の二倍、と、上昇幅が大きい事から、単純に身体的な調子の良さといったものから生まれるものではない事は明らか。次に考えられるのは上手い具合に相手モンスターの弱点を攻撃出来た時というものだが、その場合、バトルをこなすに連れ弱点を突ける精度が上昇する傾向にあってしかるべきだと思われる筈が、どれだけバトルをこなしたとしても一向にクリティカル率が変動しない事を考えると、これも間違っていると思われる。
そこで考えられるのが、やはり武器自体によるものなのではないかというものだ。とは言え、クリティカルが発生する瞬間だけ突然武器の威力が増す事は恐らくない。そこはマテリア穴と同様の現象で、何らかの作用が装備者の肉体に働くのだろう。
そう、見た目はただの釘が刺してあるバットに過ぎないが、実は他の武器と同様、実に絶妙に装備する者とシンクロしていたのだ。だからこそ、若干とはいえ高いクリティカル率を誇っていたのであり、同時にクラウドにリミット技というこの上ない力を授けてもいたのである。
ただし、FFTの武器全般にその「シンクロする」という概念が無いと言っている訳ではない。もしかしたらFFTの武器も、装備者と絶妙にシンクロしているものがあるのかもしれない。事実「永久ヘイスト」のエクスカリバー等、直接装備者に影響をもたらす武器は存在する。
しかし、単にその武器達が、クラウドと深い部分でシンクロ出来なかった為に、彼にリミット技をもたらさなかったのだろう、という事だ。そして唯一上手くシンクロ出来た「マテリアブレイド」であっても、常日頃慣れ親しんでいたFF7の世界の武器とは異なる事で、あれだけ強力だったリミット技も発動が遅い事を始めとして精彩を欠いていたという事だったのだ。
さて、先にクラウドがFFTの世界において弱いのは、マテリアと切っても切れない関係にあるFF7の世界に浸かっていたからこそで、単に彼自身に全ての非があった訳ではなく、どちらかと言えば仕方のない事だったという事を述べた。
しかし、そんな厳しい環境には一切見向きもされず、「隠しキャラ」という肩書きを持つだけでラムザ、つまりはプレイヤー達の大き過ぎる期待の眼差しを向けられたクラウドには受難の嵐が吹き荒れる事となる。
- 専用武器が無いから「リミット」が使えない。
- 反して(マテリアが無い事もあり)モンスターの極悪さは以前の比ではない。
- 一応パーティーに入ったが、右も左も分からないこの世界でもしクビにされれば路頭に迷うのは確実。
- だから必死で頑張るが、全然付いて行けそうにない。
- いつ除名勧告が下るのかとビクビクする毎日。
- 苦労の末遂に「リミット」が使える状況に!!
- だが、「マテリアブレイド」が、クラウドの真価を十分に発揮するだけの力を持っていなかったが故に(もしかしたらクラウド自身が素早さ面でも大きく劣っていたからなのかもしれないが)発動がこの上なく遅い。
- この時点で活躍が絶望的になる。
- 明らかに足手まといとなる。
- やけにラムザ(=プレイヤー)から冷たい視線を感じる。
- 他のユニットは何も言わないが徐々に疎遠に。
- 肩身が狭くなる。
- 気付けばパーティー内における自身の状況が、「除名されない唯一の理由が『隠しキャラ』だから」となる。
- このままではいけない。せめて一般ユニットに肩を並べるくらいにまでは活躍しなければ。
- しかしシナリオが終盤である事に加え、加入時のLvが1では…
- 万が一、一般ユニットと同程度にまで成長したとしても、「隠しキャラなのに」という汚名のレッテルを剥ぐには到底及ばない。
…何の因果か、FFTの世界に迷い込んでしまったクラウドの行く末はあまりにも暗い。
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