10/05/01(土) 11日目 はぐれのさとり
そう言えば仲間を酒場に預けたままで牢獄に入れられちゃってたから、もうしばらくは一人で戦わなきゃならんのかと思っていたのだが、さあ脱獄するぞという段になって戦闘準備を整えるためにルーラで一旦外の世界へ出ていけることになろうとは思わなかった。えっ、それはいいのか。確かにルーラは設定上一般には存在しない呪文だから牢獄がルーラ対策されていなくても不思議ではないのかもしれないが(屋根が無いだけで結界自体は張ってあったのかな)。って言うか、これもうわざわざ他の囚人のために帰って来なくったって一人だけ逃げちゃえばいいんじゃないの。親兄弟を助ける必要があるとか、長年の付き合いのある仲間を見捨てられないとかいう事情があるならまだしも、つい昨日今日出会ったばかりで牢獄内の説明をしてもらったくらいの人を命がけで助け出す義理なんてないもんね。
…だが私は、最後には彼らのもとへ戻ることを決意するのだ。酒場から仲間を召喚し、一晩ぐっすりと休んで、必要なら新しい武器や防具、アイテムを十分に揃えて、満を持してカデスの牢獄へ戻る。何故か? ほぼ他人と変わらない人達のために、何の見返りも期待できないであろうことのために、どうしてそこまで献身的になれるのか? 否、献身的になりたくてなっているのではない。私はいつだって献身的にならざるを得ず、私以外の全ての善人に無償の好意を与え続けなければならない。例えたった一日苦しみを共にしただけの仲なんだとしても、見捨てる訳にはいかないんだ。だって、ここであいつらの期待に応えてやらなきゃあ、この先いつまで経ってもイベント一つ進んでくれやしないんだよっ……
こうして牢獄を脱出した私は、いよいよ敵の本拠地、ガナン帝国城へ乗り込むこととなった。雰囲気的にラストダンジョンと言われてもおかしくはない佇まい。だが感覚的には「ここで最後」と言うにはまだまだシナリオ上の疑問が多くて時期尚早のような気がする。先日突然反旗を翻して女神の果実を根こそぎ奪っていったかつての師イザヤールの件とか、ここまでで何度か主人公達とすれ違っている謎の女の正体とか、神の国から忽然と姿を消していた神のこととか。ただ今作ではソフト発売後の配信シナリオによってその辺りのことに触れるという手も使えるからそこはあまり参考にはならないのかもしれない。シナリオの内容がどうこう、ということよりもビッグボウガンが出てきてるから終盤、ボストロールが出てきてるから終盤、という根拠の方がよっぽど信憑性ありか。
ということでいきなりラスボス戦となっても慌てない程度のテンションで帝国城へ乗り込むことにした。そしたらどうだ、あろうことかラスボスどころか誰がどう見ても中ボスと分かる扱いの奴に全滅を喫することになってしまった。シナリオ上ボスで初めて主人公達を教会送りにしたのはガナン帝国三将軍の一角、その名もギュメイ将軍である。初めの内は、特技を豊富に持ってはいるがどれもこれも物理攻撃系のものばかりだから「スカラで固めれば問題ないな」などと思っていたのだが、奴はしかしたった一つだけ極めて厄介な技を持っていたのだった。
まじん斬り
このあまりにも見覚え、聞き覚えのあり過ぎる特技が楽勝ムードをあっさりと吹き飛ばした。本来まじん斬りとは「命中率は低いが当たれば会心の一撃」という技であるが、我々のレベル不足が祟ったのかこの戦闘に限り「当たれば即死」という大技へと変貌を遂げていたからである。失敗すれば無害だが成功すれば死亡。事実上のザキじゃないかと思いながら初めの何回かは避けていられたのだが、その内に「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」の法則に従って被害者が出てしまうともう敗戦ムードは濃厚になっていた。最後は、体勢を立て直す前にもう一人死んだらアウトという状況の中、我がパーティーの誇る優秀回復役僧侶の華麗なザオラル3連続ミスが響いてどうにも立ち行かなくなり幕を閉じたのだった。
無念、無念。まじん斬りはずるいよ。でもそのまじん斬りに一度すら耐えられない戦力がまず問題なんだよな。でもなあ、ザオラルがちゃんと発動してくれてたらあそこからでも何とかなったんじゃないかと思うんだけどなあ。このとき私はついさっき聞いた賢者への転職法のことを思い出し、ザオリク習得のために僧侶を賢者にさせるかどうか悩んでいた。もしかしたらもうすぐラスボスかもしれない。もしラスボスなら今日にもクリアになっちゃうのかもしれない。そんな段階になって今更レベル1キャラクターの育成の手間を取ることは果たして妥当だろうか。しかし安全確実な蘇生呪文は他の何物にも代え難いほどの魅力。このさき少なく見積もっても2〜3回の大ボス戦が待ち構えているであろうことを考えると仮にギュメイ将軍を今の力で退けられてもそのうち手詰まりになってしまうかもしれない。そうなって結局ザオリクに頼るという話になるのなら今習得しておいても…
悩んだ末、結局もう一度挑んでみようということになり、即座に再戦を申し込んでみた。勝った。何のことはない、どこで判断を誤ったのか知らないが、奴が一回もまじん斬りを使ってこなかったので適宜ダメージを回復させているだけで苦もなく倒せてしまったのである。
げに恐ろしきはまじん斬りの凶悪さよ。
私は今日、普段冒険者達からそのまじん斬りで手当たり次第に斬りかかられるメタル系モンスターの気持ちを少しだけ知った。
進行状況:11日目
- カデスの牢獄地下牢でゴレオン将軍を倒す。
- 天の箱舟に乗って神の国へ。
- 女神セレシア復活。
- ガナン帝国城・入口でゲルニック将軍を倒す。
- ガナン帝国城・皇帝陛下の間の前でギュメイ将軍を倒す。
- ガナン帝国城・皇帝陛下の間で暗黒皇帝ガナサダイを倒す。
- 堕天使エルギオス復活。神の国へ。
- 新たに実った女神の果実を食べる。
- 次回、打倒エルギオスを掲げ神の国へ殴り込み。
10/05/02(日) 12日目 最終回・想いは遠く空の向こうへ
今作は前作と違ってレベルアップ時に手に入れたスキルポイントを溜めておき、後々好きなときに使えるようになっているが、魔法戦士(元魔法使い)の最終的な使用武器を何にしようかパーティー加入直後からずっと悩んでいた結果、このほど貯蓄ポイントが100ポイントを超える事態にまでなってしまった。今ならどんなスキルでも一瞬でマスターできるということに。もっとも、生来の貧乏性が故にそんな豪快な行動には間違っても出られないのだけれど。
さて結局ガナン帝国城はラストダンジョンではなかった訳だが、堕天使エルギオスの向かった神の国へ赴いて、かつての面影を完全になくしたその光景を見て今回こそ完全に悟った。ここがラストで間違いないと。ここに来て真の黒幕的キャラ登場というストーリー展開しかり、神の国を舞台にするという演出しかり、DQシリーズのラストダンジョンにどこか共通して見られる禍々しい雰囲気しかり、今私の置かれている状況の全てがこここそクライマックスの地であると物語っていた。
更に、その考えを一層確かにする展開が起こる。ガナン帝国3将軍の復活(=かつての宿敵との再戦)。直前のダンジョンで倒したばかりの奴らがもう再登場したのには、さすがに間を置かなさすぎではないか、物語の進め方に行き詰った週刊少年ジャンプの中位連載漫画でももう少し「溜める」んじゃないか、などとつい思ってしまったが、まあ道中見も知らぬ中ボスに何度も何度も立ちはだかられるより燃える展開なのは間違いないところ。と言いつつ、またあのギュメイ将軍と戦わなきゃならなくなったことに内心では多少滅入っていたのだが。
まずはゴレオン将軍。力馬鹿の相手は楽なので順当に撃破…と思いきや、前回よりも威力の増した感のある怪力に押されて魔法戦士がやられてしまい、その状態のまま勝利してしまった。ああ、取得経験値に差が付いちゃうなあ、などといつもの下らないポリシーが曲げられたことに少しショックを受けていたら、ここで気付いた。そう言えば、本プレイで棺桶を見るのって初めてだ。そう、人が死ぬことはこれまでに何度かあったが、前述の下らないポリシーのためにきっちりとバトル中に復活させていたし、復活させる余裕がない場合はイコール勝てる見込みもない戦いということで全滅させられていたので、中途半端に1〜3人だけ死んでいるという状況になったことがなかったのであった。ということは無論ザオラルを使えるようになるまでは死者0。本人は全くそんなつもりもなかったが、どうもここまでかなり堅実なプレイをしてきたらしいことがうかがえる。御大に「慎重過ぎる」だの何だのとうるさく言われるのも故なきことではないという訳か。納得はいかないが。
続くゲルニック将軍は軽くいなす。あんたストーリー上では他の2将軍と違ってちょっと仕事したりしてたけど戦闘じゃパッとしなかったな。まあ落ち込むなって。呪文を駆使する知能型の戦闘スタイルが力任せに武器を振り回す単細胞な奴に劣るっていう客観的事実が証明されたのが悔しいのは分かるけど。
最後のまじん斬り将軍も頼みのまじん斬りがいまいち振るわなかったせいでリベンジの甲斐なくあっさり散った。やっぱり奥の手を一つしか持たないっていうのは弱みだな。結局まじん斬りが当たってくれることに賭けるしかない運次第の戦いしかできない分際でよくも将軍の地位まで上り詰めていけてたもんだよ。私だったら仮に将軍への昇進を打診されても身に余る評価だし、何より恥ずかしいから辞退すると思うな。と、まじん斬りが一撃でも当たったらザオラルによる運次第の復活に賭けるしかなくなる分際の私が言ってみる。勿論そんなことを臆面もなく言えるのはいつの世も勝者の特権だ。多分彼も昨日私達を全滅させたときには似たようなことを得意気な顔で言ってたんだと思うよ。
3将軍を退けると、見るからに最深部の見るからに神の玉座的フロアへ辿り着き、そこにエルギオスはいた。ひしひしと伝わる緊張感。ここまでは比較的楽に来れたと思うが、何だかんだでDQシリーズのラスボスには苦労させられた思い出の方が多いから油断してはならないのだ。思い出すんだ、デスタムーアに手も足も出なかったときの絶望、ラプソーンにこてんぱんにやられたときの放心、シドーにベホマを唱えられたときの衝撃、ゾーマに「光の玉」を使うまでの猛攻、何度倒してもその度に少しずつ姿を変えて再び立ち上がるデスピサロの執念、たった一人の人間に敗れた竜王の無念、魔王なのにしもべに頼ったミルドラースの小心、戦闘形態を4つも持っていながらアルテマソードの連発で成す術なく倒された史上最も惨めなオルゴデミーラの醜態……あれ?
私の気合いも虚しくエルギオスは倒れた。だがこのとき既に私とエルギオスの間にはある暗黙の了解があった。こんなことで終わるようではDQのラスボスじゃあない。持っているんだろう、全ての力を解き放つための変身を。するとエルギオスは、
ならば天使の姿をすて、完全なる破壊の化身と化そうではないか
私のあとを追ってくるがよい!
そう言って外へ飛び出して行ってしまった。あれ、これは一度下界に帰って宿で一泊してきてもいいよということか。確かにここまでの3将軍戦とエルギオス戦での消耗はある。しかしゴールドマンとは違い真摯な人間である私は正々堂々と連戦を申し込むことにした。
だが絶望と憎悪の魔宮で待っていたエルギオスは私達に一瞥をくれるとこう言い放ったのであった。
……来たれ。闇竜バルボロスよ!
てっ、てめえ! 人が疲れた身体を押して正面から挑もうって言ってるのにそれは卑怯だぞ!
私は騙された。騙されたのだ。堕天使に飽き足らず正真正銘の悪魔にまで堕ちたとは言っても元は同じ天使だったのだからとほんの少しでも誠意を見せた私が愚かだった。奴めは、度重なる戦いを経て次第に劣勢に立たされる私達を見ながら自分だけはゆっくりと体力の回復を図っていたのだ。卑劣な策略にかかった私は、バルボロスこそ辛くも退けたが、最早十分に戦える体力を残しておらず、続くエルギオス戦でシナリオボス相手に2度目となる全滅を喫する。
そうか、そういうことか。ならば私も相応のやり方で奴に挑むとしよう。気付けば私ははぐれメタルを狩っていた。資金稼ぎではなく、転職直後の一時的修行でもなく、純粋なパーティー全体の戦力底上げという意味では何年振りになるか分からないレベル上げという行為にせっせと勤しんでいた。大人げない? 馬鹿言え。どう考えたって大人げないのはあっちだろう。多分今頃「人間など他愛もない」とか何とかしたり顔で呟いてるんだぞ。一度は負けた3将軍に加えバルボロスまで駆り出して、最後疲れ切っていた私達にただ追い討ちをかけただけなのにもかかわらずだぞ。そんなのを前にしたらこんなの卑怯の内にも入らないよなあ。こっちはいつだって他の誰の力も借りずにこの身一つで戦い抜いてるんだから。
そうする内に魔法戦士がバイキルトを覚え、僧侶がフバーハを覚えた。そして全員のレベルが42を超えた頃、私は重い腰を上げ、奴のもとへ舞い戻った。必要な力を得、十分な休息を取って再びやって来た私達が勝利の声を上げたのはその十数分後のことである。
そしてエンディングへ。
エルギオスはかつての恋人ラテーナの愛に触れ改心し、二人一緒に昇天していった。あのー、さきほどの非道に対する謝罪の言葉は…あー、行っちゃった。
女神の果実を実らせるという役割を終えた天使達は、夜空の星となった。女神セレシアは言う。彼らは星空の守り人として永遠に輝き続けるだろうと。永久強制労働そしてまた、エルギオスを倒すために女神の果実を食べて人間になった主人公は、これから人間界で人々を見守っていく役割があるとも。
御大とも別れの時。何やら御大は最後とても意味深なことを言いかけて主人公の下を去った。今だから言おう。御大のそのキャラクター、正直そうまで悪いとは思っていなかったと。
そして主人公は再び下界に降り立った。人間としての身体で、人間としての心で。天使として生きていた頃の友に会うことはもうない。でも彼は寂しくなんてなかった。この世界には、掛け替えのない絆で結ばれ合った人間の仲間達がいるのだから。
人々の悩みある限り、人々の迷いある限り、彼の使命は終わらない。かつて天使だった男は歩き出した。空に輝く星々にも負けぬ、人間界の守り人となるために。
主人公の冒険はこれからだ!
長い間ご愛読ありがとうございました!
kemkam先生の次回作にご期待下さい!!
進行状況:12日目
- 魔の宮殿で堕天使エルギオスを倒す。
- 絶望と憎悪の魔宮で闇竜バルボロスを倒す。
- 絶望と憎悪の魔宮で堕天使エルギオスに敗れる。
- 再戦の末、絶望と憎悪の魔宮で堕天使エルギオスを倒す。
- エンディング
- まさかのTo be continued
- 以下一周目クリア時の「戦いのきろく」
- プレイ時間:46時間23分
- マルチプレイ時間:0時間0分
- 戦闘勝利回数:1111回(←果たして多いだろうか?)
- 錬金回数:1回
- 獲得称号数:23個
- クエストクリア数:28個
- 宝の地図クリア数:2回
- すれちがい来客数:0人
- 討伐モンスターリストコンプ率:73%
- おしゃれカタログコンプ率:16%
- 収集アイテムリストコンプ率:44%
- 錬金作成コンプ率:1%
ラシックス