本題に入る前に、まず私はこの事を述べておく必要がある。

あれはチョコボの空中庭園で起こった出来事だった。貴方は、ゲーム上の画面で言えば左奥に位置している物体を調べた事があるだろうか。当然だがそこに立てばフィールアイコンが表示される為、既に知っている人も多いだろう。そこには「オズマ」と呼ばれるモンスターがいる。FF9における最後の敵、トランス・クジャや永遠の闇をも凌ぐ力を有する存在である。
この、オズマの眠る場所を調べた時に行われた、ジタンとメネとのやり取りを思い出してほしい。ジタンが「なんだろう……ちょっと召喚塚に似てるかな」と言いつつそこを調べようとした直後、メネはこう言ってそれを制止した。

「ちょっと待つクポ!!」

更にメネはこうも言う。

「この世のものとは思えない…と言ってもオバケとかじゃないクポ」
「どうなっても知らないクポ……」


ここで、1つの疑問が浮上した。何故メネはオズマの事を知っているのだろうか? エーコの話によれば、妖精であるモーグリ達は普通の人間に感じ取る事の出来ない「何か」を敏感に察知するらしいので、それを考慮すればメネがオズマの「この世のものとは思えない」異様な何かを感じ取っていたと言えるかもしれない。ことメネはこの空中庭園に「ここほれ!チョコボ」用のアイテムを埋めるべく、何度か同地へやって来ていただろうから、ジタンがあの場所を調べるよりもずっと前から何かしらの危険な存在がいると認識していたとしても、それは何ら不思議な事ではない。
だが、そんな話では到底納得出来得ない事実が存在する。メネは、ジタン達が彼の制止を振り切り、その末に見事オズマを倒した時、ジタン達に「オズマのカード」と「こうりゃくぼん」なるアイテムをくれるのである。
これが謎なのだ。この2つのアイテムの内「オズマのカード」については、全世界のカードプレイヤーの内、僅か2人だけとは言え使用する(内1人はこの世の者ではないので除外されるが)ものなのでメネが持っていて問題はないとしても、「こうりゃくぼん」についてはどうしても疑問が浮上してしまうのである。
まず「こうりゃくぼん」とは何なのか、それを簡単に説明しておこう。アイテムの「だいじなもの」に分類されるこの本は、内容こそカードマスターになる為のヒント的な事が書いてあり、オズマの事には全く触れてないものの、ヘルプを参照してみるとそこには「あなたはもう無敵です。よくできました。」とあり、これが確かにオズマを倒し、世界最強の称号を得たのだという事を証明するアイテムになっている。
つまりただの、商魂たくましいだけである筈の一モーグリが、例え盗賊団にボスとして身を置いているとは言えただの満たされ得ぬ金銭欲に支配されているだけの一モーグリが、この本を持っている筈はないのだ。
盗んで手に入れた可能性はないのか。貴方はそう思うかもしれない。しかし、その可能性も薄いと言わざるを得ないだろう。「こうりゃくぼん」を持っている程に強い猛者共をあれらひ弱なヴァイス達がまかり間違っても倒せよう筈がないのは勿論、壊滅した国家から金品強奪を繰り返す彼等が、たまたまそこで見付けた「こうりゃくぼん」を手に入れたのではないかという可能性を考慮してもだ。何故なら、そもそも宇宙を救う事の出来る面々が4人集まっても奴に勝てるかどうかは分からないのに、それ程の力を持つ者達が過去にもいたかどうかは怪しいからだ。大体にして、チョコボの桃源郷に踏み入った者自体数える程しかいないと思われるのに、尚且つその中にジタン達と同等の、或いはそれを凌ぐ実力を持った者がいたと考える方が不自然だ。更に言うなら、もし過去にそういった人間が存在したとして、そんなにも強き者の属する国家が他国家間との争いによって滅ぶ事等あるだろうかと考えれば、より不自然さは顕著となる。

だとすれば、この本をメネが持っていたのは何故か。考えられる事は1つだ。メネは、以前にオズマを倒していたと思われるのである。これに対し貴方は、「『過去にオズマを倒した者が存在した』とする考えよりも一層不自然ではないか」と思われるかもしれない。しかしここで思い出してほしいのだ、メネには飛空艇をも優に上回る速度で飛行出来る素早さが備わっていたという事を。世界各地を飛空艇で飛び回るジタン達を常に尾行し、時に先回りすらしてしまうメネの飛行速度が並のものではないという事は明らか。もしかしたら、有史以来初めてとなる存在ですらあるかもしれない。そんな、想像にも及ばない素早さを有するという時点で、「メネがオズマを倒していた」とする説は過去にオズマを倒した者が存在した可能性よりもよっぽど信憑性のあるものと言えるのである。
勿論、前回の「白い悪魔」であまり力がないという事が明らかになっているメネが単独でオズマを倒せたのかと言われれば、それには疑問を呈さざるを得ない。恐らく、彼には強力な仲間がいた筈だ。今回は、後にその「仲間」についても言及する事となる。
と、ここで、ある興味深い事実がうかがい知れる。その力の無さ故に、仲間無しではオズマに勝つ事が出来なかったであろうメネだが、しかしオズマを倒した事を証明するアイテムである「こうりゃくぼん」を所持しているのは彼だ。これはもしかすると、メネを含むオズマを倒したパーティーの中において、メネがリーダー格であったという事を意味しているのではないだろうか。
ジタン達を持ち上げられない程度の腕力、及び体力は、オズマを相手にするに当たっては無いものに等しいと言える。だが、その非力なるメネが、オズマを倒したパーティーの中ではリーダー格なのだ。一体これはどういう事か。推測するに、メネにはあまり力がない代わりに、強大な魔力が備わっていたのではないだろうか。

さて、今回の話はここから始まる事となる。この、「メネは強力な魔法の力を秘めている」という新たな事実が明らかになった事により、これまで全く見えていなかった様々な真実が次々と明かされていったのだ。
驚くべき事に、過去全ての事を含め、ここまでは単なる前置きに過ぎなかった。ここからは、メネの本当の真実を、改めてその誕生から語っていく事にしよう。


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