最早それは想像を遥かに越え、現実であれば悪夢極まりないであろう。そこにあるのはあらゆるものを凌駕する圧倒的な力と、それを突き動かす絶対的な欲。その成り立ちを語り、その行く末を案じる事、それは絶望への一途に過ぎない。
時、来たりてそれは動き出す…猶予等、既にそこには無い。もう我々にそれを止める術は残されていないのだ…


ただ、私は思うのである。ガイアに生きる人々に、もう未来への可能性が欠片も残されていない訳ではないと。
その事を、以下の事物から推し測る事が出来る。

世界各地、至る所に埋められているお宝に関して、その場所を示す石版については人為的に埋められていた事が分かっているが、ではお宝そのものは一体誰が埋めた物なのだろうか。
普通のお宝について言えば、それは古代人か誰かによるものだとして十分に説明が付く。しかし、開ける事によってチョコが進化する合計4つのお宝については、同様の説明が通るべくもない。どう考えてもチョコ1人の為にしか存在していないそれが、実際ガイアの地中に存在している可能性、やはりそれは、チョコが故郷へ帰って来る事を懇願していたデブチョコボの配慮によって埋められた物であるとしか考えられないと言えよう。恐らく「地中にあるお宝を感知し、それを掘り出せる能力」の事を知っていたデブチョコボは、チョコが将来その能力を如何無く発揮し、無事故郷へ帰って来られるであろうとの予測の下、そうなる日を心から祈りつつチョコを進化させる為の宝箱と、宝箱へ辿り着かせる為の石版を埋めておくという手立てを取ったのだ。またこれは、他者に桃源郷の存在を知られない為の措置とも言える。
そのお宝が、一旦他者の手によって掘り返され、そして埋め直された。
デブチョコボはメネと、夢の中で4度、そして桃源郷で1度と、計5度対面している。この5度の対面の中で、特に桃源郷において成された対話を通して、尚且つお宝を埋め直すメネの奇怪極まりない行動を加味して、もしデブチョコボが、メネの企てた世界征服計画を朧げながらにでも感じ取っていたのであれば。その体躯からしても実力不明瞭なデブチョコボの事である。彼の力量如何によっては、メネに対して反旗を翻せる可能性も無くはないのではないか。
これについては、デブチョコボがメネの計画を察していたのではと臭わせる点が1つある。
ゲーム中の「チョコボのお宝探し」で実際に石版の模様を見てお宝の埋められている場所を探す際、ヘルプを参照してみるとたちまちにしてそれは現れる。石版の指し示す場所のヒントを述べてくれるモグタローである。
一般に流通するアイテムはおろかどんなレアアイテムについてだって的確な解説を施してくれるモグタローの博識振りから考えれば、多くのお宝に関してはその在り処を知っていてもおかしくはない、それだって少々不思議には思うが。だがしかし、当然桃源郷の存在等知らない筈の彼は、つまりデブチョコボが埋めた宝箱の存在なんて絶対に知ってない筈でなければならない彼は、その宝箱の所在を示した石版に関してすらも、至って普通にヒントをくれる。ここが鍵だ。
もしかしたらこれはデブチョコボの、最悪の事態に備えた保険だったのではないか。即ち、いつかは自力で故郷へ帰って来るだろうとの確信はあったデブチョコボだったが、何らかの、例えば不慮の事故に見舞わる等してそれが困難になってしまう場合もある事を想定し、モグタローにチョコの事を見守ってくれる様に頼んでおいたと考えられるのである。
そうだとするなら、モグタローは見た筈だ。何処からともなくやって来たモーグリが、ある時期からチョコと暮らしている光景を。それだけならまだしも、共に生活するようになって少ししてから夜中になる度、大勢の盗賊団に地面を掘り返させていたあまりにも不穏な動きを。彼が不信感を抱かなかった訳がない。そう、チョコの事を頼まれた際に桃源郷の場所も聞いていたのであろうモグタローが、デブチョコボにその旨を報告していた可能性があるのだ。
そしてその後もメネは、チョコが掘り当てる筈だったお宝を全てチョコ抜きに見つけ出し、そうしたかと思えばそれらお宝を埋め直したりと、傍から見れば奇妙にしか映らない行為を取り続ける。こういった、メネの不審行動をモグタローが逐一報告していたとするなら、デブチョコボがメネの計画を察していた可能性は十分にある。
その上で、万が一にもデブチョコボが類稀なる力を持っていたとすれば。いや、デブチョコボのみならない。彼率いるチョコボ達と、これまで数多の危機を潜り抜け続けたスティルツキン擁するモーグリ達とが一丸となったとしたら、彼等1人1人の実力は到底メネやモグオにかなうべくもないのだがそれでもこの多勢による力が奇跡的にももしかしたなら。
淡い期待ではあるが、抱かずにはいられない。


そしてもう一つ、ジタン達の事を忘れてはならない。
今でこそ、彼等はメネの計画を知る由もないのだろう。だが、このおぞましき計画が、メネの始動と共に明るみにさらされたその時、

ジタン・トライバルが、
ダガー――ガーネット・ティル・アレクサンドロス17世が、
アデルバート・スタイナーが、
フライヤ・クレセントが、
クイナ・クゥエンが、
エーコ・キャルオルが、
サラマンダー・コーラルが、
そして、最早今生に無きビビ・オルニティアの、遺志を継ぎし「子ども」達が、再び一つ所に集うだろう。


その時、幸せを望む者達と、破滅を望む者共との、真の最終戦争が勃発するのだ。


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