第5回 未来のコーネリア王
よくぞ王女を助け出してくれた。さあ
この北に橋を架けよう。わしに出来るのは
この位の事しかない。大陸に渡り
クリスタルの輝きを取り戻すのだ!!
万事無事にセーラ王女を救出、一路コーネリア城へと帰還した光の戦士達は、再び王に謁見。王女救出を感謝されると共にその礼として大陸への橋を架けてもらえる事になった。これで、いよいよ本格的に旅が始められる。
そしてセーラ王女からも、
これはコーネリアの王女に代々伝わる
リュートです。ガーランドが私と一緒に
城から持ち去ったものです。きっと何かの
役に立つでしょう。持って行ってください。
何と歴代のコーネリア王女に伝わるというリュートを授かった。弦を一本、二本と弾いてみる。綺麗な音色だ……
ふと、セーラ王女の顔を見る。その顔は、ガーランドという悪漢の手からようやく解放されたにしては、不自然に暗く映った。
玉座の間を立ち去る時、光の戦士達は今一度王女に話し掛ける。すると。
……私と一緒にここで……
いいえ 何でもありません。
さあ旅立ちの用意を。
クリスタルに輝きを!!
沈痛な面持ちを見せたのも束の間、一転して気丈な表情を見せたセーラ王女の振る舞いに、戦士達はどうしても思わざるを得ないのであった。
王女、貴方は一体、誰にその言葉をかけて下さったのですか?
「私と一緒にここで……」
王女のこの言葉は、どう考えてもその果てに「結婚」なるものを見据えたいわゆる求婚、俗に言うプロポーズ的意味合いがあった様にしか思えない。
だが、目の前には今四人の人間が立っているのであった。瞬間、戦士達に緊張が走る。王女と結婚出来るのはこの中でたった一人である。もし王女と結婚出来たなら、間違いなく一生裕福な生活を送っていける。誰だ? 誰だよ?
戦士は思う。四人の中で一番の力を持ち、ガーランドとの戦いでも最も活躍した俺こそが王女には相応しいのだ。もしもまた王女の身に危険が迫ったとして、王女を守ってやれるのは一体誰だ? それは俺だ。お前等には無理だよ。モンクなら何とかならん事もないかもしれんが、あんなむさ苦しい奴なんか王女のお眼鏡に適う筈もあるまい。
モンクは思う。確かに力ではまだまだ戦士の奴に劣る。だが戦士は所詮装備品に頼らなきゃ満足に強くなれないジョブに過ぎない。島国であるからか弱い武器防具しか取り扱われていないこの国ではあいつなんぞの限界は知れている。その点素手こそが最強たるモンクの俺こそが王女と結ばれるべきなのだ。
白魔術士は思う。心優しきセーラ王女が惹かれているのは戦士やモンクといった力でしか自分を顕示出来ない単細胞等ではない。仲間が危機に陥ったその時、大いなる慈愛の下に治癒魔法を詠唱するこの精神こそ、唯一王女と釣り合うというものだ。
そして黒魔術士は思う。力もない。防御面でもパーティー一弱い。魔法もこの国に留まる限り最弱クラスのものしか扱えない。だがそれが何だ。王女の連れ合いに求められるものはそもそも力ではないのだよ。王女や国の護衛はそこらの兵士に任せておけばいいのだ。それよりも重要なのは知識。そう、この様々な魔法を操る事の出来る溢れんばかりの知識こそ、この国の今後の繁栄を固く約束するのだ。王女を娶るのは、俺しかいない。そしてそれは王女も分かっている事だ。
お互いがお互いを蹴落とそうとせんばかりの雰囲気にいよいよ張り詰める場の空気。だがしかしこの一件は直後、王女自身が言葉を遮って戦士達を送り出した事で結論を見る事なく終幕を迎えた。
一通りの挨拶を終え、城を後にする光の戦士達。
その内一人の手にはリュートが、そして四人の間には要らぬ一言で険悪になったムードが重苦しく渦巻いていた。
セーラ王女から掛け替えのないものを授かった一行は、いよいよ北へと旅立つ。