では、ここからが本題である。この「テラの民起源説」が新たなる真実として明らかになった事により、一体何が言えるのか、それを、前回の「メネΩ」の順に沿って考えてみよう。

まず「メネΩ」では導入として、メネが強大な魔力を持っている事を証明する為にメネとモグオが二人でオズマに勝利している事を示したが、ここで考えてみた。
本当にメネとモグオは二人だけでオズマに勝つ事が出来たのだろうか?
ここはFF9のバトルシステムに則って考えてみよう。メネとモグオについては未だに詳細な実力が不明なので、まずは実際に戦って確認の出来るオズマについて考えると、まず奴が持つ特徴の一つとして、「一瞬でATBゲージが満タンになる」というものがある。また、FF10-2で確認される、行動可能になってから行動を選択する(=コマンドを決定する)までの時間の基準値である「思考時間」という概念がFF9にあるかどうかは不明だが、その凶悪さから、例えFF9に「思考時間」が存在していたとしても行動可能になってから行動を決定するまでの間にタイムラグは発生しないものと仮定すると、奴の行動が終わった次のフレームではもう次の行動が決定されている、という状況が発生する事となる。
一方、その点に関してメネとモグオの二人についてはどういう事が言えるだろうか。彼等がオズマと同様に「ATBゲージが瞬時に満タンになる」という特殊能力を持っていたかは分からないが、その素早さを考慮すれば、それと同等の現象が恐らく起きていた事だろうと考えられる。また、思考時間に関しても、手加減しないのであればやはりオズマと同じく無くす事は出来るであろう。
となるとこの時点で、メネ・モグオvsオズマという状況においては、メネかモグオが行動を休めない限り、三者が順番に一回ずつ行動する事になる(カウンター攻撃が発生した場合を除く)。メネやモグオのどちらかが、オズマのとある行動と行動の間に二回以上行動するのは、彼等のスピードをもってしても不可能な事なのである。同時に、オズマがメネやモグオの行動間に二回以上行動する事もまた不可能な事となる。
では、バトルの内容はどうなるだろうか。バトル中にオズマが取る行動は14種類に及ぶのだが、まずはそれぞれについてその特徴をおさらいしてみよう。

「ジハード」
・敵味方を問わず全員攻撃である
・闇属性
・オズマは闇属性との相性が「吸収」

「フレア」
・無属性単体魔法

「メテオ」
・無属性全体魔法
・ダメージの算出方法が「1から(自分のLv+自分の魔力-1)までの乱数×110」

「ホーリー」
・聖属性単体魔法

「フレアスター」
・無属性全体魔法
・ダメージ値は「対象のLv×50」で固定

「カーズ」
・物理タイプの全体攻撃
・ダメージと共に混乱、毒、スロウ、ミニマム、暗闇の五つの追加効果を確実に発生させる
・対象に上記の追加効果に対する耐性があれば、追加効果は発生しない

「レベル4ホーリー」
・Lvが4の倍数の対象に聖属性攻撃

「レベル5デス」
・Lvが5の倍数の対象を戦闘不能状態にする

「デス」
・対象を戦闘不能状態にする

「ケアルガ」
・対象のHPを回復
・カウンターで使用する事がある

「ミニマム」
・対象をミニマム状態にする
・対象がミニマム状態だった場合は確実に命中する(ミニマム状態を解除する)

「エスナ」
・各種の不利なステータス異常を解除

「MP吸収」
・対象のMPを吸収する
・使用MPは0だが、自身のMPが0になるとこれは使用しなくなる

「バーサク」
・対象をバーサク状態にする
・条件を満たした時のみカウンターで使用する

以上である。
この内、メネ達に対してはあまり影響を与えないであろうものを挙げると、まず「フレア」と「ホーリー」については、単体攻撃なのでメネ達に致命的なダメージを与える事は出来ないと思われるので除外出来る。次に、対象にステータス異常効果を付加する「カーズ」「デス」「ミニマム」「バーサク」に関しては、メネ達がボス級以上の実力を持っている事から、それらステータス異常に対する耐性はあるものと考えられ、また、召喚獣である事も加味すれば、これらは完全に無効化する事が出来るものと考えられるので除外する。「レベル4ホーリー」と「レベル5デス」については何とも言い難いものの、前者については例え複数人数が該当する事になっても、受けるダメージ量は「ホーリー」を下回るものなので、問題は無いと言えるだろうと思われる。後者については、一人でも戦闘不能になる事になれば幾らメネ達であろうがピンチに陥りかねない事になるが、そもそもレベルが5の倍数の味方を擁している状態で正体不明のモンスターに挑もうとする様な無謀な行動にメネが出るとは考えられない為、当時における彼等のレベルは、少なくとも「レベル5デス」を使用された場合に、複数の戦闘不能 者が出てしまう様な状況ではなかったという事であろう。「ケアルガ」と「エスナ」はオズマが自身に対して使用するものなので当然除外する。「MP吸収」は、まずオズマより残りMPが多い相手がいないと使用しない、という特徴があるが、そのオズマの最大MPは実に9999なので、事実上使用する様な状況になる事はない。勿論メネ達、特に魔力に長けるメネのMPが9999、或いはそれ以上である可能性は大きく(ゲーム中に10000以上のMPを持つモンスターは登場しないので、それ以上になれるものなのかどうかは不明だが)、そうであるとしたらオズマがMP吸収を使用する条件をいとも簡単に満たす事になるが、その場合そもそも吸収されたところで痛手にも何にもならないので、やはり除外対象となる。
となると、残ったのは「ジハード」「メテオ」「フレアスター」の三種となるが、これについては少々考えてみなければならない。
まずは「ジハード」について。これは威力面で強力な事は勿論だが、より重要なのは、これは敵味方を問わず全体攻撃であって、更にオズマが闇属性の攻撃を吸収する、という点である。唯一の回復魔法である「ケアルガ」はオズマの残りHPが27767以下になっていなければ使用せず、残りHPを問わず使用する可能性のあるカウンター「ケアルガ」に関しても、カウンターの発動確率は残りHPの推移に応じて13%〜50%の範囲でしか動かない。つまり、その程度の回復量であればメネ達にとっては力押しも十分に可能であり、問題はないのだが、そこに全ての奇数回目のターンで使用する可能性のある「ジハード」が回復手段の一つとして加わるとなると、長期戦化するのは避けられないのだ。勿論、ただ単に戦闘が長期化するだけの事であれば何の事は無い。だが、そこに次に挙げる事項が加わると事態は一変してしまうのだ。
次は「フレアスター」について。「フレアスター」のダメージ量は一定値で固定だが、使用者によって算出方法が異なるのは先にクジャとトランス・クジャが使うそれぞれの「フレアスター」のダメージ算出式に若干違いがある事から明らかで、そしてオズマについてはそれが「対象のLv×50」である。ゲーム中ではLvが100以上のモンスターが登場せず、ジタン達のLvの上限値も99である事から、FF9におけるLvの上限は99であると仮定すると、オズマが使用する「フレアスター」で受けるダメージの最大値は4950となる。
一見これは何でもない値の様ではあるが、果たしてメネにとってはどうだろうか。過去の妄想でも体力があまり無い事で知られているメネである。そこに体力自慢のモグオが加わるとすれば、確かに彼等の強さは折り紙付きである。が、流石の彼等であっても、相手全体を対象にした攻撃の内、誰かの分を他の誰かが、といった様に都合良く分配出来たりはしないだろう。
となると実は、メネは「フレアスター」によって大きな被害を受けてしまう事にもなるのではないだろうか。勿論これには反論出来る余地が二つある。一つは、幾ら体力面で劣っているとは言っても、相対評価する基準が元々高い為に、普通の人間、或いは普通の人間では最早なくなってしまったがジタン達と比べれば十分に高いHPを誇っているのにもかかわらず「比較的劣っている」と表現されてしまっているかもしれない点。更にもう一つは、召喚獣にLvの概念があるかどうかは分からないがここではあると考えて、Lvが上限の99である事の不利性、それはつまり「フレアスター」に関する事等々をテラの民が理解していたとすれば、強力な実力を持ちながらにして、Lvの値だけは低い存在に仕立て上げていた可能性はある。しかもそれは「レベル5デス」等の、Lvの値がとある数の倍数であるかないかで攻撃の命中如何が変わる類の攻撃に備える為、7、11、13等、又、その程度の素数であったかもしれない。
これらの反論説より、結局何とも言えなくなってしまうのだが、しかしこれも、次に挙げられる事由と比べれば、実は何でもない事なのである。
最後は「メテオ」について考えよう。オズマの使うメテオのダメージ量の算出方法は上記にある通り「1から(自分のLv+自分の魔力-1)までの乱数×110」だが、この式にオズマのLv99と魔力32を代入すると「1から130までの乱数×110」となり、これより、「メテオ」で受けるダメージの最小値は110で、同じく最大値は14300となる。勿論後者の場合はダメージ上限の超過分を切り捨てるので実際に受けるダメージ値は9999となる。これはつまり、相手がジタン達であった場合、運が悪ければ、どれだけ熟練したパーティーであってもそれだけで全滅してしまう危険性をもはらんでいるという事を示している。
では、これに関してメネはどうだろうか。やはりこれに関しても確実な話は何一つ出来ないのだが、もしもメネのHPが10000未満であったとするなら、唯一の回復役と言っていいであろう彼が二ターンに一度は戦闘不能になってしまう可能性があるという事になり、絶対の自信を持ってオズマと戦うには少々穴がある気がしないではない。

ではここで、より最悪の状況を想定してメネ・モグオvsオズマの内容をシミュレーションしてみよう。ちなみにバトル中の行動順が決定される上で最も重要にして唯一の要素である一ターン目の行動順に関しては、敵は瞬時にしてATBゲージが満タンになる為、わずかながらオズマの方がメネとモグオの行動を上回ったと仮定する。

オズマ:メテオ → メネとモグオに9999ダメージ、メネが戦闘不能に
モグオ:何らかの攻撃 → ダメージ上限超過によりオズマに9999のダメージ
オズマ:カーズ → モグオにダメージ(追加効果は発生しない)
モグオ:フェニックスの尾 → メネ復活
オズマ:ジハード → メネ再び戦闘不能に、オズマは闇属性により回復

さて、どうだろうか。
もし次にモグオがまたメネをフェニックスの尾で復活させたとしても、次のターンのオズマはカーズを使用する可能性がある為、やはりメネは戦闘不能状態となってしまう。しかもこの間、徐々にモグオにもダメージは蓄積されていっている点を忘れてはならない。
つまり、一度メネが戦闘不能になってしまった場合、モグオが彼を逐一復活させると仮定すると、メネ側の戦況は悪化していくばかりとなってしまうのだ。しかも、オズマは奇数ターン目にジハードを使用してHPを回復させてくる他、カウンターでケアルガも使用する可能性があるので、先のシミュレーションにおいて折角モグオが一ターン目に与えた9999ダメージが完全に相殺されるのも時間の問題である。
以上の点より、もしもメネが戦闘不能状態になってしまった場合にモグオが取るべき行動は、彼をそのままにしておいて単独でオズマに立ち向かう、という事になる訳だ。では、そうすると仮定した場合は、どう考えられるだろうか。
まず言える事は、モグオが実行する全ての行動に対し、オズマはカウンターでケアルガを使用する可能性があるという事である。実際には何度と無く連続でカウンターを発動するという事はまず無い訳だが、ここではたった1%であってもメネとモグオが敗北する可能性を残す訳にはいかないので(そんな可能性があるのであれば、そもそもメネ達がオズマに戦いを挑んでいたかどうかが怪しくなる為)、最悪の状況を考える必要性があるのだ。
もしもモグオの全ての行動に対してケアルガをカウンターで発動するという事になれば、流石にダメージが完全に相殺され切る事は無いが、その八割方は無効化される事となってしまう。これでは戦闘が極めて長期化する事は避けられず、勿論ジハードの使用によって折角コツコツと与え続けていたダメージを一瞬にして0にさせられる可能性もある事になる。
その間減り行くモグオのHPに関しては、モグオがピンチになってきたところで、某ルートから大量に入手出来るであろうエリクサーを使用すれば事足りるのだが、こうなるといつまで経ってもお互いにダメージを与えては回復する作業を繰り返すだけで戦いに終わりが見えない。
もしこういう状況でモグオがオズマをやっとこさ倒せたとして、それでオズマが素直に二人の舎弟的身分に成り下がるのかと言われるとかなり疑問だが、一応はこの叩いて回復して、という状況が長時間に亘ったと仮定して更にシミュレーションを進めてみよう。
では、戦いは激しいのに何故か均衡状態を長時間保った末に何が起こるか。それは、オズマのMP切れである。特徴上モグオにはMPが殆ど無いものだとすれば、オズマにはMP吸収を使う機会が無くなるので、幾ら9999という膨大なMP量であろうが、いずれは底を尽きてしまうだろう。
MPを失ったオズマが取る行動。それは、奇数ターン目にフレアスター、偶数ターン目にカーズ、これを繰り返す、というものである。フレアスターによって受けるダメージは、モグオのLvが99であったと仮定しても、モグオにとっては高々と表現してもいいであろう4950程度に過ぎない。また、カーズによって受けるダメージはそれ以下であると考えられ、勿論それによる追加効果は発生しないので、メテオを使用される可能性のあったさっきまでの状況に比べて飛躍的に自分が受けるダメージ量が少なくなる。更に相手はジハードとケアルガというHP回復方法の全てを失ってしまっているので、モグオに対して出来る事はもう何も無くなっているに等しい状態になるのだ。
この状態になってしまえば、後の話は簡単なものであろう。モグオは、先程よりも自身のHPの減少スピードが遅くなっている中で、もはや体勢を立て直す事の出来ない目の前の球体をいたぶっていけばいいだけなのだから。
これより、モグオがいちいち戦闘不能になったメネを復活させないとすれば、一応メネとモグオがオズマに勝利する確率は100%という数字をたたき出す事になる。勿論このシミュレーションは、オズマが漏れなくカウンターでケアルガを使用するという事を前提としているので、実際にこの通りに戦えば、大抵の場合は飛躍的に早い段階で勝利を収める事が出来得るのは明らかだろう。
ただし、だ。このシミュレーションは、メネ側に有利となるある事を前提としている事を忘れてはならない。その「ある事」というのは、「モグオがオズマに対してダメージを与えられる何らかの行動を持っている」というものだ。
今回のオズマ戦のシミュレーションは、勿論ながら各種妖精達に希望の宝石類をあげていない状況を想定している為、オズマが闇属性を吸収すると共に、射程距離が「遠」でない攻撃は相手に届かない。
つまり、もしモグオが例えば直接攻撃しか攻撃手段を持っていないとしたら、彼がオズマにダメージを与える事は全く出来なくなる。これにより彼はメネが戦闘不能に陥る度にメネを復活させる必要が生じる事となり、一応は100%であった勝率が、一気に下がってしまうのである。上述した通り、彼等はテラの民が生み出した「落ち度」ある召喚獣である為に、その可能性は十分に有り得ると言えるだろう。
長くなったが結論を言おう。つまりメネとモグオは、幾らあれだけの力を持っていても、もしかしたら二人だけではオズマに勝てなかったかもしれないのだ。
勝てないかもしれないとなれば、冷静なメネはオズマに戦いを挑む事は無かったのかもしれない。しかし「こうりゃくぼん」がメネの手中にあるというのは紛れも無い事実である為、ここに疑問が生じる事になるのだ。
「どうやらメネはモグオと二人ではオズマに対して負けてしまう可能性があるのに、何故彼は『こうりゃくぼん』をその手にしているのか」
モグタローがメネの味方に付いているのであれば話は全く違ってくるが、既に述べている通りそれはあり得ない。
しかし同時に、これも上に書いているが、万が一この状況でメネがオズマに戦いを挑み、そして倒せたとしても、オズマがメネの命令を素直に聞いてくれるかと言えばそれはやはり考え難い為、もしかしたら次の事が言える様になるかもしれないのだ。
「オズマは元々メネの仲間である」
メネ達がオズマと戦わなかったであろう事、戦ったとしても勝てなかったかもしれない事、勝てたとしても絶対的優位には立てなかったと思われる事、これらよりそう考えられるのだ。つまり、オズマもテラの民の伝承が生み出した召喚獣だという事である。だとすれば、戦ってもいないのにメネが「こうりゃくぼん」を所持している理由も分かろうというものだろう。

と、ここで、メネとオズマが戦ったという事実が無くなった事により、メネの凶悪な力を証明するものも無くなったと考える者もいるかもしれないが、その心配は無用である。「メネΩ」にもその一節があるが、「ただの、商魂たくましいだけである筈の一モーグリが、例え盗賊団に、ボスとして身を置いているとは言え、ただの満たされ得ぬ金銭欲でまみれているだけの一モーグリが、この本を持っている訳は無い」のだから。
ただ、メネとオズマの一騎打ちとあればオズマに軍配が上がる公算が非常に大きいとは言え、メネは伊達で「こうりゃくぼん」を手にしている訳ではない。それもそうだろう。メネはその体力の低さ故、オズマの様にHPが10000を大きく超過する者との戦いでは圧倒的に不利になる要素が増してくるが、メネが本来ターゲットにすべき人間を始めとした生物の大半は、HPが10000を超える事は無い為、幾ら自身のHPが低かろうがかなり有利な位置にいるのである。慎重に慎重を重ねて行動に移さないだけで。片やオズマは少々異常な人間が数人も集まれば簡単に打破されてしまう事はゲーム中で証明される通りだ。更にこれに、頭脳面での比較を加味してしまえば、最早オズマに勝ち目は無いと言えるだろう。
戦いとは力のみに非ず。綿密な戦略も実力の内である。敵によっての得手不得手もピンからキリまでだが、重要なのは主だった相手に対する相性である。実力とは様々な面から多角的に考え、総合的に判断されて然るべきなものなのである。メネは「こうりゃくぼん」を持つべくして持っているのだ。
ちなみに、「こうりゃくぼん」にある「無敵」の称号は以上の通りメネに与えられているものであるにも拘らず、ジタン達がオズマを撃破した事でメネがこれを授けたのは、単に自分の実力を隠す為のカモフラージュだと考えていいと思われる。もしかしたらジタン達はモグタローから聞いたか何かで「こうりゃくぼん」の存在を知っているかもしれないのだ。「こうりゃくぼん」自体を隠しておく意味も無いので、ここで渡しておくのは自然な流れといっていいだろう。


さて、次はメネ達、特にメネの出生に関してである。
メネの出生の秘密に関して「メネΩ」では、メネが生まれて間も無く捨てられたというくだりがあった。しかし、メネが召喚獣である事が明らかになった今、その上で全く同様の事が果たして言えるだろうか。それを考えてみなければならないのだ。
やはりここで参考となるのは、「モーグリに扮していた召喚獣」という唯一の実例であるモグであろう。果たしてモグはどの様にして生まれてきたのか、という事だ。
モグに関しては、エーコと同じ日に生まれた、という事実がマダイン・サリにいる周囲のモーグリの話によって確認出来るが、ここで重要なのは、周囲のモーグリ達、つまりモコ、モチャ、チモモ、モーネル、モリスンは、モグが召喚獣であるという事を知っていたのか、という点である。

もしも彼等が、エーコとモグが同じ日に生まれた事どころかエーコの方が先に誕生したという事実すら語っている彼等が、モグの正体が実は召喚獣マディーンであるという事を知らないのであれば、モグは何の変哲も無く普通に生まれてきた風に見えたという事であり、つまりメネやモグオやモグタロー、モグジローについても、その実力云々という異常が認められるまでは何ら他のモーグリ達と変わり無く生まれてきて尚且つ生活してきたという事が言えるのであり、メネが捨てられたくだりに関して考え直すべき点は特に存在しない事になる。
この場合、普通のモーグリ夫婦から突然召喚獣が生まれてくるという事は流石に考え難い為、本来なら何の異常も無く生まれ、育っていく筈だったモーグリの身体を、召喚獣という実態を持たない存在が媒体とした、悪く言えば乗っ取ったという事になるだろうか。そうだとすれば、本当だったら「モ何たら」とかいう名前を付けられて平穏無事に暮らしていたであろう今ではメネという名の元モーグリやらの事を考えると、そのモーグリの悲運さを哀れまずにはいられない。

ちなみに、マディーンがモーグリを媒体としたのは、常にエーコの傍にいて彼女を護るという役目からすれば当然だと考えられるが、一方メネ達がモーグリを媒体としたのは何故だろうかと考えた時に、それは彼等を生み出したテラの民の意思であるという考えが浮上する。
召喚獣という存在は、もしかしたらそれを知らない者達から見れば、さしてモンスターと違わない風に映る可能性があると思われる。つまり、彼等はそれぞれ、それ自体で、決起さえすれば多くの生命体を滅ぼす可能性を秘めているので、人間達から見て敵視される風体でいる事により、度が過ぎれば無用にもなりかねない争いを生む可能性を敢えてそれに加えておく必要は無かった、という事である。
勿論それ以外にも、強力な精神体だとも言えるであろう召喚獣を宿す事に十分に耐えられる肉体というものは普通の生命体が持ち合わせているものでないだろうと思われるので、妖精という特殊な生態系という点でその条件をクリアする存在であるモーグリがまず候補として挙がった事もあるだろうが。

では一方、マダイン・サリのモーグリ達が、モグの正体は召喚獣であるという事を実は知っていながら、エーコの為にと彼女には、そして勿論外部の人間にも隠していたとすればどうだろうか。
つまりこの場合は、言うなれば突然空から降ってきた、青天の霹靂的な感じか、もしくはさっきと同様に、元々普通に生まれてくる筈だったモーグリの身体を媒体とした可能性、この二つが考えられる。姿形こそモーグリだとはいえ凶悪な程の力を秘めている召喚獣とあっては、ほぼ「メネΩ」と同様の理由で捨ててしまう行動に出る事も理解は出来るだろう。それが例え後者、つまり実の両親がいたという状況だったとしても、誰もメネを捨てたモーグリ達を責められはしない。
前者である場合は、必ずしもモーグリの両親の間に生まれたとは言えなくなるので、例えば元々リンドブルム領で孤独にも誕生し、直接ヴァイス・マジックヴァイス大盗賊団に拾われたと考える事も出来るが、この場合だと、最終的に世界征服へ繋がる目的の切っ掛けとなる「捨てられた事によって生まれた、生きとし生ける全ての者に対する憎悪の念」が認められなくなってしまうので、やはりこの場合も、とある集落のモーグリ達に一旦は拾われたものの、召喚獣であると、しかも悪い事に誰も手を付けられない程凶悪な召喚獣であるという事が分かった事で捨てられたと考えるのが妥当だろうか。
つまり、マダイン・サリのモーグリ達が、モグの正体を知っていたとしても、やはり「メネΩ」に書かれていた、メネを捨てるくだりについては考え直すべき点が存在しない事になるのだ。

まとめよう。ここでは、マダイン・サリにいるモーグリ達が、モグの正体を知っていたか否かのそれぞれについて、メネの生まれた状況を考えてみた。
その「メネの生まれた状況」に関しては、両親を持って生まれてきた普通のモーグリを召喚獣が媒体とした説と、言い方は悪いが突然湧いて出てきた説の二つが挙げられた。
そこで、まず「マダイン・サリのモーグリ達がモグの正体を知らなかった」場合においての「メネの生まれた状況」は、「両親を持って生まれてきた普通のモーグリを召喚獣が媒体とした」で断定される。
一方「マダイン・サリのモーグリ達がモグの正体を知っていた」場合においての「メネの生まれた状況」は、二つ挙げられた説のどちらもが当てはまり得る。
そして、いずれの場合であろうと、親を始めとするモーグリ達、或いは親に相当するモーグリを始めとするモーグリ達に捨てられたという展開は「メネΩ」にあった通りだ、という事である。その展開が、程無くしてメネが深い憎悪を抱く切っ掛けとなったのは言うまでもない。
問題は、果たしてマダイン・サリのモーグリ達がその真実を知る所にあったのかどうか、という事だが、これに関しては残念ながら断定出来る証拠が無い。是非とも彼等自身に聞いてみたいところではあるが。


リンドブルム領に捨てられたメネがヴァイス・マジックヴァイス盗賊団に拾われ、その中でボスに君臨しようと画策し実行した事。その計画の途中でモグオの事を知り、お互いが身を置いている状況を知る事で意気投合した事。メネが盗賊団のボスに君臨した後、盗賊団を率いて資金を集めアルテミシオンを堕とし、巨大な情報ネットワーク「モグネット」を手中にした事。そしてある日盗み見たお手紙にチョコの事が書かれていた事。これらの展開は、メネが召喚獣である事が明らかになっていようが、「メネΩ」のものから変化が無いとみていいだろう。


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