07/05/10(木) 第741回 三年目の理解
今年もこの日がやって来た。5月10日。FFTに登場する骸旅団の騎士の一人にしてティータ死去の最たる原因となったゴラグロス・ラヴェインその人の生誕記念日である。
あまりに他キャラでも代わりのきく登場の仕方をし、あまりに他キャラでも代わりのきく消え方をしていったせいか祝賀三年目にして早くも君の事について語るネタなんて特別ありもしなくなっちゃったとすっかり思ってたけど、でも違ったな。何せ、まさに今日、5月10日木曜日、FFTのリメイク作「FINAL FANTASY TACTICS 獅子戦争」なるタイトルがPSPから発売になったんだもんな。
この事実を知った時は驚いたもんだよ。と同時に、これまで私が君に抱いていた勝手なイメージを改めなけりゃならんなとも思った。FFシリーズとしては外伝的作品でいてしかし大きな人気を誇るかのFFTのリメイク版が君の誕生日に発売されるなんて。エルムドアだダイスダーグだガフガリオンだと印象的個性的悪役が数々登場するあの作品中にあってザルモゥ以上に陰の薄かった君の、装いも新たに生まれ変わるその日が誕生日と被っていた。これっていうのは、明らかにスクウェア陣の計らいではないか。如何にスクウェア陣が君の存在を不可欠だと思っているか、如何に君を縁の下の力持ちとして信頼しているかという事の表れではないか。
ゲームを最後にプレイしてから早四月が経とうとしているが、私は、今日以上にゲームから自主的に遠ざかっている事を悔いた事はない。もし今、ゲームをこの手に取っていいとされるのなら、私はすぐにでもFFT獅子戦争を買って、生まれ変わった君の勇姿を見届けるのに。
君の姿は見えないが、しかし私はせめて、二年前に発したあの、
自分の誕生日がティータをベオルブ家の娘であると勘違いして誘拐した挙句にリーダーの言う事もろくに聞かず終いにはその誘拐に費やした労力すら水泡に帰させるゴラグロスと同じであるという事を知った時は軽〜いショックめいたものがありましたがでも――
あの言葉を訂正しよう。私は、君と同じ誕生日で良かった、そう心から思う、と。
ゴラグロス、誕生日おめでとう。
07/05/11(金) 第742回 [endless] (形) 終わりのない, 長々と続く
『FF』新作がサイトでひっそり発表に! その名も『ディシディア ファイナルファンタジー』
「DISSIDIA FINAL FANTASY」公式サイト
07/05/12(土) 第743回 新時代来る
「743」が「ななしさん」なら「132人目の素数さん」は「ななしさんさん」って事になるから「132人目の素数」でいいんじゃね? なんてのはこのサイトで出すにはあまりにコアな話の上これまで散々言い尽くされてきた事だろうからそんな「雑文」第743回は話題を変えて昨日の続き。
という訳で、二十年目を迎えたスクエニ社スクウェア陣ファイナルファンタジー開発部は遂に示してくれた。1987年にFFの歴史が始まって以降、いつ頃からか言われていたあの、冗談ともつかぬ皮肉ともつかぬ言葉、「『FINAL』『FINAL』って、いつ終わんだよ」への答えを。
思えば、(一FFファンとして嫌味なく言うつもりだが)熱心なFFファンはずっと昔からこの問に解を用意していたものだ。「FINAL FANTASY」は「最後の夢」じゃなく「究極の幻想」と訳すのだと。はたまたシリーズ作品を全て含めたFFというタイトル全てをひっくるめて坂口博信氏にとっての「最後の夢」なのだと。彼等は情熱的に、スクウェア陣の声を代弁していたものだ。例え、「FINAL FANTASY」の原典が実際に「最後の夢」からきているのだとしても。例え、FFという作品が今となっては坂口氏どころでなくFF一作目立ち上げ当時のスタッフの手をほぼ完全に離れてしまっているのだとしても。
有志はいつの時代も戦った。主に忠実に。己の信念に忠実に。人気作品には避けられない、強大なアンチの存在を相手にして。戦いは10年か続いた。驚く事にこの10年、少しも争いの火種が消える事はなかった。これも国を代表する二大RPGである事の宿命か。そしてもっと驚く事に、その内現実に「FINAL FANTASY」の終局が訪れ、争う事の意味すら失った人民が自然とかつての平穏を取り戻すものと思われていたのにそうなる気配を見せなかった。むしろ、かの一大シリーズは現在進行形でその舞台を広げ続けている。二十歳にもなってちっとも落ち着くつもりのないFFを見、争いはその規模拡大に比例して大きくなろうとしていた。
その時だ、主が、スクウェア陣が、満を持して立ち上がったのは。そして彼等は、開口一番こう言ったのだった。
ファンタジーは終わらない
「DISSIDIA FINAL FANTASY」公式サイトがオープンした2007年5月8日。この日、長きにわたった熱烈FFファンとアンチFFとの不毛な争いはその幕を閉じた。
そして同時に、アンチFFと、「最後」という事だった筈がいつの間にやら「終わらない」としたFF関係者との不毛な争いがその火蓋を切るのだった。
07/05/13(日) 第744回 買わないゲームの話
最近かなりご無沙汰している分ゲームの話題が全然出て来ないので、この際もうちょっとFFの話。
「DISSIDIA FINAL FANTASY」(どう略すんだこれ)という語感が悪いにも程があるタイトルについて二日間ネタにしていながら肝心の内容については一切触れていなかったが、どうやらRPGではない様で、では何かと言われて聞いてみれば「ドラマティック プログレッシブ アクション」というものらしい。言われた所で、じゃあ一体それは何だと問うてみなければならなくなるのであるが少なくとも「アクション」だという事か。後、FF20周年記念企画の一環であるらしい。「歴代のFFキャラが〜」とかいう事を聞くから過去作品の人気キャラクターが総出演とかそういう感じで、各々がドラマティックでプログレッシブなアクションを繰り広げる訳か。悪く言えば寄せ集めとも言えるが、まあその辺りはそうならない様祈っているしかあるまい。
ただ、買うかどうかとなると恐らく買わないんだろうな。「何故?」と聞かれても「何となく」としか答えられんが。強いて答えるなら、最近のFFタイトル乱発傾向にそろそろ嫌気が差して来たか、もしくはRPGでないからという所か。特に前者については本当、真面目にそろそろ何とかしなきゃならんって。一応この程開催された「スクウェア・エニックス パーティ2007」じゃ完全新作の「ラスト レムナント」なる作品が発表されたらしいが、単なる過去の栄光の寄せ集めよりはよっぽどこっちの方が期待を誘うね。ま、買うかどうかとなると買わないんだろうけど。
FFタイトル乱発と言えば、FF4がNintendoDSでリメイクされるとか。また携帯機完全移植計画ですか。有効活用出来るものはとことん利用しますなあ。でもこれまでSFCで出して、PSで出して、WSCでも出して、あまつさえGBAでも出して、それでも飽き足らずどうしても3D化させたいと仰る。まあ今回はこれまでのいわゆる「移植」とは違ってリメイクという事なのだからリリースする事の意味合いは多少異なるだろうとは言え、でも通算五作目だぞ。SFCのイージータイプも含めてしまうとすれば六作目だ。なんぼほどFF4出すんだと。リアルタイムでプレイしてこそいなかったとは言えSFC時代からFFに親しみ続けてきた世代の人間ならばそりゃあそう言いたくもなるとも。ただただ古参というだけで今やスクエニにちっとも金を落としてくれなくなった一ユーザーが何と叫ぼうが主には届いてくれんがね。
いつかは確かにスクエニの優良顧客であった筈の私がここ一年スクエニ製ゲームを一本だに購入していないのは他でもない、これまで何度引き合いに出したかも分からないFF12二周目が目下滞っている最中であるからなのだが、FF12と言えば、8月に「FINAL FANTASY XII INTERNATIONAL ZODIAC JOB SYSTEM」なる、いわゆる所のインターナショナル版が発売されるとか。
うーん、そうねえ…うーん……
07/05/14(月) 第745回 初めてここを見る人へ
すげえ、過去ログ75ここまでゲームの話ばっかりだ、なんて事をつい思った。ここはゲーム系サイトだ。
先だっての「スクウェア・エニックス パーティ2007」で幾つものFF関連企画が発表された事の影響か、昨日はYahoo! FFカテゴリからのアクセスが普段の3割増程あった。で、思うのである。本当にすまんと。
FF関連サイトを運営していながら、FF関連コンテンツを設けていながら、それらコンテンツが更新中と銘打たれていながら、実際にパソコンの前に座って書いているものはと言えばゲームとは何ら関係のないネタか、はたまた日々の愚痴ばかり。その他のコンテンツの最終更新日はいよいよ4ヶ月を突破してきた。目玉企画とされる「妄想」なんかは実に8ヶ月にもなる。トップページの更新履歴だけを見ても2ヶ月半あるブランクは、「このサイトはもう放置されてるんだな」と思われるには十分であった。
だからこそ、すまん。件のリンクからやって来た人は恐らくサイト名下部に書いてあった「ファイナルファンタジーシリーズの謎、矛盾の解説、プレイ日記等」という説明文を読んで興味を持って下さったのだろう。しかしどうだ。このサイトの一体誰が「ファイナルファンタジーシリーズの謎、矛盾の解説」をしている? 状況上仕方のない事とは言え、新たに当サイトを訪れて下さった人にとって私の身に降りかかっている苦難なぞ知る由もない訳で。或いは、「プレイ日記」の方にこそ期待してくれた方も少なからずいただろうが、どうだ、今トップページに燦然と輝く「※現在『FINAL FANTASY 12』二周目プレイ中です」の文字は、それだけで「今更かよ」感を閲覧者にもたらし、それだけでこのサイトに留まる理由と気力を失わせるぞ。
よしんばその壁を越えて「ゲーム日誌」のリンクを踏んだ方がおられたとして、そこにはまず何が書いてあったと思う。引用しようか。
奇跡の七日振りプレイ。でも時間が取れてないから全然進んでない。全然進んでないから書く事も全然ない。
何というネガティブ発言。これで私のプレイ日記を読もうかなと考えてくれた思いも挫けよう。もしか読み飛ばしたとして、その後に続く盛り上がりも糞もないイヴァリース縦断紀行の前には意気消沈も免れ得まいな。
恐らく、この程のFFニュースにおける波はもう数日は続くだろうから、せめて私はこれから我がサイトへ来てしまう人に向けて、誠心誠意謝罪したい。本当に、本当に本当に、すまん。
もっともこの言葉も、サイトの放置っ振りに落胆していながら奇跡的に「雑文」のリンクを踏んでくれた方にしか届かないけれど。
07/05/15(火) 第746回 見知らぬ鮫に想い馳せ
突然であるが、明日の更新はない。というのも、ついに私がかの地へ単身乗り込むからである。
大阪。東京に次ぐ、日本第2位の規模を誇る都市大阪。西日本出身の人間なら誰もが一度は行ってみたいと思うとされる大阪(若干の語弊があります)。その大阪へ一泊二日の予定で乗り込んでいくのである。
大阪へ行った事はないではない。しかし過去の体験はいずれも小さい頃に親に連れられてはどこぞで遊んで疲れて帰って来るばかりであった。今回は違う。何が違う? 今回は単身乗り込むのである。
出発は明日で、夕方頃には向こうへ着いて、んで向こうでの滞在時間は宿を取っている上で24時間を切るのだが、道中今から不安でならない。いつかに、「もし迷った様なら私は行き倒れに終わるんだろうな」みたいな事を書いていたが、今回はその危険性が前回の比ではないという事である。もしか明日ばかりでなく明後日もこのサイトの、「雑文」のみならず「俺的事典」に至るまでが更新されなかったとしたら、その時は心の中で静かに手を合わせてほしい。たった二日じゃ死ぬにも死ねんが。
これは試練だ。都会への苦手意識を未だに持ち、大阪における思い出と言えば海遊館におけるそれしか持ち合わせていない私へ課せられた試練だ。私はこの強大な敵に臆せず、目を逸らさず、真正面から立ち向かっていかなくてはならないのだ。海遊館と言えばつい一昨日、同館の目玉であるジンベエザメの遊ちゃんが亡くなったとのニュースが舞い込んで来たが、されば私は遊ちゃんの弔い合戦であるかの心持ちで明日を迎えようではないか。あの日の思い出を、あの雄大な泳ぎを直に見た時の感動を胸に、大人になった私は戦地へ赴くのだ。
つっても、海遊館行ったのってもう優に10年以上は前の話だから、当時泳いでたのって遊ちゃんじゃなかったんだろうけど。
07/05/17(木) 第747回 地図が読めない男、地図が読めない男
帰還。
今年に入ってからそれまでの生活を思えば変革とすら言っていい位の遠征っ振りで西へ東へ、というのは言い過ぎで基本的には東の方ばかりへ奔走していた私であるが、やはりかの地は手強かった。他の「ギリギリ都会」や「まあひいきめに見て都会」とは違って本格的な都会のレベルはやはり違う。それは、今こうしてパソコンに向かっている私の疲労度ややられ具合からしても一目瞭然であった。とどのつまり、道に迷ったのである。
色々迷ったが前日に「やっぱり」と地図を用意しておいて良かった。さもなくば本当に今日の更新はなかったかもしれない。いや、やはりそれも言い過ぎで、東西南北どちらの方向へ向かっているのかも分からずただただ線路に沿って闇雲に歩いていた私はどうしてもダメそうなら駅まで歩いて、んでそこからホテルの最寄駅にでも行けばいいやとか思っていたから、その佇まいはかろうじて放浪者のそれではなかった事と思う。
とは言え、迷い方が酷かったからか、精神的にはかなり参っていた。一言に「酷かった」と言ってもそれは「随分さまよった」という意味での「酷い」ではなく、「迷うなら迷うでもうちょっとマシな迷い方もあったろうに」という意味で。それと言うのも、私はホテル最寄駅からホテルへの道のりを間違えてしまったのではないのだ。宿泊予約の取ってあるホテル自体には、翌日うかがう予定だったビルディングを道中にて確認しつつ割かしスムーズに着いた。それから私は、翌朝の事を考え、ホテルを出て目的ビルに到着するまでどの程度の時間がかかるのかを再確認する為、一旦ホテルを出てこれまで来た経路を逆にトレースしてみる事にしたのだ、良き夕食処がないもんかとの散策がてら。だがしかし、もうお分かりの事と思うが、これがマズかった。私は私の、空間認識にかける著しい能力欠如を見くびっていた。世の中には地図を回転させないと読めない人間と回転させなくても読める人間とがいるがそれで言うならかなり前者寄りの人間である私が、初めて訪れた地で、駅から20分か歩くだけの行程を完全に記憶し、あまつさえそれを逆順に辿るなんて高等芸が出来た筈もなかったのである。そして極め付きに、私は持参して来た地図をホテルに置いてきた「訳ではなかった」 いや本当、迷うなら迷うでもうちょっとマシな迷い方が出来なかったものか。
名目上は夕食を食べに出たというだけの事だったのに、ホテルへ帰り着いた私は疲れ切っていた。それもそうだ。過去最長クラスの移動時間を経たその返す刀で本来の予定の三倍近くを歩き通した事による影響が身体に表れない筈がなかったのだ。
時間は、9時。だが私は、明日までに準備しておくべき資料をまだ仕上げられていなかった(こればっかりは私の不手際から来た災難だったが)。
今すぐにでもベッドに倒れ込みたい衝動をぎりぎりの所で抑え、パソコンに向かう。そんな私に、またもやあの悪魔が襲い掛かろうとするのであった。何というタイミングか、昨日から今日にかけて列島各地で猛威を振るったあの――
そしてまたもや、二部構成。許せ。察しの通り、今回はまあそんなには眠くないが、それ以上にとんでもなくやられているのだ。
07/05/18(金) 第748回 約束を破る男、約束を破る男
つーか、ただ大阪に行ったというだけの事で二日分のネタをこしらえるってのはどうなんだ。私kemkamをよく知る人なら早くも察しの付いている通り実際はそんな事全然気にもしてないが。この「雑文」はこれからもこうして、都合の良い時にだけは「日記」という性格を前面に押し出していきつつ、ネタ数を地味に稼ぎつつ、長きにわたって生き続けるんだろうな。
さて、ホテルに帰り着いてからは翌日必要となる資料の準備に追われていた私であったが、すんでの所で日付変更前に全てを片付ける事が出来た。後はゆっくりと、あれだけ望んだベッドに横になって眠りにつくだけである。
しかし一つ気になっていた。天気だ。大阪出発前日に目にした予報では、何とも運の悪い事に丁度大阪に滞在する16日、17日にだけ雨が降るとされており、早くもモチベーションを下げさせられる憂き目に遭っていたのだった。あまり好ましくない予報を聞いてしまうと精神が打たれ弱い私なぞは若干不眠の症状に襲われる危険性もあったが、大概のテレビ放送が終わってから気になってしまっても困る。仕方がないので眠い目を擦りつつもまだ眠らず、天気予報を見てから就寝する事にした。
しかしここで悩む。大阪のテレビ番組事情にはてんで明るくないからいつも天気予報をやっているのがいつなのやらがよく分からない。ここはやっすいビジネスホテルで、だからかその日のテレビ番組表などという便利なものは備わってはいなかった。調べようと思えば携帯電話で幾らでも調べられたろうが、我が携帯電話はいわゆるパケット定額制を利用しない方向で契約している為、月々の料金の事を考えればそれは出来なかった。仕方がないので延々NHKを見ている事にした。NHKなら折に触れて天気予報を放送してくれるだろう。私にとって幸運だった事は、その時、私の興味を強く引く類の番組が民放で放送されていない事であった。
さて、私の予見通りに程なくして天気予報は始まった。そして大方の予想通り、前線を伴った低気圧は順調に大阪方面へ接近し、今夜から明日朝にかけて激しく荒れた天気になる事が予想されると言う。そしてこの、名を何というのか失礼ながら忘れたがこの気象予報士であろう人がそう流暢に話す中、私は、その言葉に私自身を戦慄させる恐ろしい一言が含まれていた事を聞き逃さなかった。現在目下接近中の低気圧には、寒気が伴われている、と。前線ばかりでなく、寒気までセットになって丸ごとお届けという事になっている、と。
いつ頃からかNHKの天気予報では、スクリーン右側にアイコンがあしらわれた複数のボタンがあり、画面に直接タッチする事で現在選択しているボタンに対応したマーク(太陽や雲や傘のマーク)をスタンプの様に表示させたり、或いはドラッグにあたる操作をしたりするシステムを採用しているが、その日の天気予報で寒気と前線を伴った低気圧に、かてて加えて南からの湿った空気が入り込むと聞いた瞬間、私はとてつもなく嫌な予感がした。そして、私がそんな不穏な空気を感じ取るが早いか、気象予報士の人は実にスムーズに雷のマークを選択するや、それを日本に落とすかの如くドドンと押し付けたのである。前線に湿った気流にしかも寒気とくれば流石に「まあ雨は降っても雷は起こんないかもしれないし」なんていう馬鹿な希望など初めから持てる筈もなかったが、しかしその道のプロにはっきりと断言される事のショックはそれなりにはあるものだ。何処の誰だか知らない気象予報士の貼り付けた雷のマークは何処か、丁度大阪の辺りに被さっている様に見えた。
あれ、天気予報のくだりだけでそこそこ書いたな。もう11時だし、今日はここで止めとくか。
ああ、でも、昨日「二部構成」って宣言した上に今日の冒頭でも「二日分のネタを〜」って言ってしまってるのに、臆面もなく三日分のネタとして仕上げるのはどうだかな。かと言って冒頭の一節を「三日分のネタを〜」としてしまっては、「おい、まだ二日目分の序盤だろうよ。最初から大阪ネタ一つで三日分の更新を稼ぐつもりだったのかよ」と思われかねない。大体にそう修正したとして昨日の「二部構成」発言は取り消せないし。ああ、困った。どうしようどうしよう。
そうだ、閲覧者の皆さんの反応を気にして悩むんだったら、その皆さんに聞いてみればいいのか。って事で質問。
07/05/19(土) 第749回 アンケート結果に応じて三部作完結編を書く男、アンケート結果に応じて三部作完結編を書く男
翌日の起床予定時刻は6時。だがしかし、翌日を迎える直前まで次の日の用意をしていた上にきちんと天気予報の放送まで待っていた私がベッドに潜り込んだのはもう5月17日を30分程度過ぎてからの事であった。即ち、私に許された睡眠時間は僅かに5時間半。対して、人間が一日に確保するべきであるとされる睡眠時間は8〜9時間。対して、私が起床後これといって遜色ない活動を送る為に必要であるとされる睡眠時間は9時間以上あればあるだけ。私は早くも、翌日己に課せられた任務を、一定の割合だけ低下したパフォーマンスでもって臨まなければならない運命に立たされたのであった。
そしてもう一つ、決して忘れてはならない、無論決して忘れられる訳もない現実がいよいよ私を襲い始めた。不眠。周囲の環境が普段のものから変わると途端に眠れなくなる性質を持つと言われる私kemkamは前回のホテル宿泊時にも体験したあの地獄に立ち向かっていかなくてはならなかったのだ。時間は5時間半。だがいつもでさえ寝ようと思ってから寝るのには30分程度かかるから私に与えられている睡眠時間は事実上5時間。これをどれだけ、本来の目的の為に使う事が出来るのか。そろそろ危機感をも感じてきた私はそそくさとベッドの上に横になった。
実は私には勝算があった。大阪に到着してから、夕食を終えてホテルに辿り着くまでに延々と歩いた事による疲れは、流石に私を深い眠りに落としてくれるだろうと信じていたのだ。最初の内は「もしか明日寝坊しちゃったらどうしようかなあ」などという豪勢な悩みまで持った程だ。だがしかし、それはあまりに大きな誤算であった。直前に低気圧が接近中であるという旨の天気予報を見てしまった私の精神状態は、私自身が意識していたよりもずっと大きな不安感をもたらしていたのである。そして現実は、やはり辛いものであった。私が望むか望まざるかに拘らず、またもやあの生き地獄が口を開ける。
ではご覧戴こう。以下は、あの日私が目を覚ます毎に確認した携帯電話にしっかと表示されていた時刻群である。
1:46
2:27
2:52
3:05
3:22
3:55
4:36
4:58
5:55
無論、詳細に記録しようなどと思えばそうこうしている内に本格的に目が覚めてしまうので時刻は大体のものであるが、起きた回数だけは記憶していたから大きな差異はない筈だ。中でも目に付くのはやはり一発目の1:46分か。これは私が寝始めた0:30から1時間ばかりか眠れたという意味ではなく、4〜50分は眠れずにベッドの上でゴロゴロ転がっていた挙句ようやく寝たのに30分程度で目を覚ました、という意味である。
3時またぎ辺りの起床の頻繁さもかなり目を見張るものがある。特に3:05〜3:22は他と一線を画していると言えるだろう。まず3時過ぎに目を覚ましてしまった私は「ああ、全然眠れた気分じゃないのに、もう半分程も時間が経っちゃったのか」と嘆きつつまた目を閉じた訳だが、次に目を覚ました時にそれまでとは違う、ちょっとした清々しさみいなスッキリ感みたいなものを感じたものだから「お、何とか眠れたのか」と思ってやにわに携帯電話を見てみたら20分も経っていなかったのだから。20分て。確かに寝たのに。もっとも、この時はどちらかと言えば「お、まだ2時間半近くは寝られるな」という喜びの方が大きかった様に思うが。
んで、止めに目覚まし発動5分前の起床ときた。確か前回の外泊時も目覚ましに頼る事なく自力で起きたんだっけか。普段ならけたたましく鳴り響く目覚ましの音に反応してようやく機嫌悪そうに起きるのがやっとで、休日ともなれば幾ら目を覚まそうがその都度二度寝してしまう程の意思の弱さを誇るこの私が。環境の変化というのは恐ろしいものだ。この間、ここ一年の内に引っ越すかもしれないという事を書いたが、もし住居を移って周囲の環境が恒常的に激変したとしたら、それに慣れるまでにほとほと疲弊し切っちゃうんじゃないのか。今まで考えもしなかったけど、それってかなり怖いぞ。
ところで、かなり不本意な夜を過ごした私だったが振り返ってみると、前回とは違い夜中に雷によって起こされるという最悪の事態は免れていた様だった。だが、思い出してほしい。現実とは決して甘くない、現実とは常に辛いものなのだという事を。現実はやってくれた。6時を過ぎて目を覚まし、しかるべき装いをしてもうすぐホテルを出ようとする状況にあって、お外の雲に雷を鳴らせたのだ。昨晩の誰とも知らぬ気象予報士の言っていた事はやはり間違っていなかった。夜を乗り切り、(淀んでいたとは言え)太陽の光を拝めた段階で根拠もなく安堵した私が馬鹿であった。しかし、仮にあの時緊張状態を解いていなかったとして、じゃあ私に何が出来たと言うだろう。目の前には、どうしたって避けようのない「雷の音を直に耳に入れる」悪夢の様な状況が立ちはだかっていた。
寝不足、そして雷による過度の緊張からか、出発の支度を整えてから原因不明の吐き気が私を襲った。可能な限りベッドに横になっていたかったが、不意に眠ってしまう可能性がある事を考えるとそれも出来なかった。雷と体調悪化のダブルパンチによって手酷いダメージを負った私はあの時何度逃げたいと思ったかしれないが、しかし一人の大人としての責任感がまた私を「常識」の世界に引き戻す。前にも言っただろうか。「雷が怖くて休んだ」などという言い訳が通用する世界は、少なくともこの日本にはない。行かなければ。動かなければ。私は立ち上がった。座っているとどんどん弱気になっていってしまう心が、立っていると何故だか盛り返してくる様に思えた。
依然として気持ち悪さは消えなかったが、何とか立ち上がり、タクシーを呼ぶ。元々は徒歩で向かう予定であったが、雷の恐怖には代えられない。表向きには、目的地へ着いた時に雨でずぶ濡れになっていてはいけないという理由と、昨日散々歩いてまだ疲れが取れないから多少お金を使っても罰は当たるまいという思いとが合わさってこそのタクシーであったが、その実少しでも光と音とをシャットアウトしようと思っての行動であった事はわざわざ言うまでもあるまい。ただ、そこは「都会」大阪。「雷が怖いからタクシーに乗りたい」という不届きな考えを持つ私は一度は「時間的にタクシーが全て出払っているかもしれません」との言葉で絶望のどん底に突き落とされそうになったが、気持ち悪さを我慢し、出発時刻を予定より20分程早める事で何とかこのタクシー争奪競争に勝ったのであった。
して、出発の時間。外に出た私は、やけに燦々と輝く太陽の光に照らされた。雨は、降った形跡はあったが、その瞬間には降っていなかった。私は二つの大きな勘違いをしていたのだ。寒気によってもたらされる雨は往々にして短時間に激しく降る類のものであるという事。そして、9階建て7階の部屋に泊まっていた私には地面を跳ねる雨音も屋根に落ちる雨音も耳に入る事はなく、ただただ遠雷の音ばかりが届いていたという事。
目の前には、いつもより明るく映る営業スマイルの貼り付いたタクシー運転手が待っていた。
大阪1泊2日遠征記 終
07/05/20(日) 第750回 ウルトラマンタケル
つーかね、あんな分量になるんだったら本当は不眠部分と起床後部分とで更に分割して全四部構成にしたかったね。流石に閲覧者の皆様の声をお聞きした上で更にそれを裏切っていくのは忍びなかったから無理に収めてみたけれど。
さて、突然何だと思われた方も多かったと思う。その「閲覧者の皆様の声をお聞きした」前々回のアンケートについてである。昨日は驚く程その事についてスルーを決め込んだが(無駄な事ばっかり書いてたら思った以上に時間がかかってしまった為にわざわざ触れている時間もなくなってしまったのだ)、大阪遠征記も一通り終わった事なので、ここでその真相について話そうかと思う。
「真相」と言う程の背景があるのかと思われようが、実際、私は至って真面目にあのアンケートを設置した訳ではなかった。その為もし「二部っつったんだったら二部にまとめれ」票が圧倒的にリードしていたとしても昨日の更新は大阪遠征記第三部で行っていただろうと思う。だがそれは、この一連の出来事が「アンケートの結果がどうあれ第三部を書くネタ」だったという意味でもないのだ。私があのアンケートを取ったのには大阪遠征記の長引きようとは全く違うある理由があった。
そもそも私はああした、訪問者が直接参加出来る類のものをサイト内に置いてこなかった(掲示板を除く)。何故か。怖いからだ。一体何が。アンケートを例に取ってみよう。とある誰かが、是非他の人の意見を聞いてみたい、世間一般の声を聞いてみたいと、何らかのアンケートを自サイト内に設けてみたとする。偶然そのサイトを通り掛かった私は「どれどれ」とそのアンケートを覗いてみるのだが…… →→[例題]あなたの好きなウルトラマンは?
あまりに悲しい光景である。だが、よく目にする現実でもある。選択肢の趣向からして小学校高学年から中学生辺りの若い年代の男の子かと思われるタケルくん(仮名)は自身のウルトラマンシリーズ好きが高じてその年でいっちょまえにホームページなどというものを持った。或いはブログでもいいが、ともあれ彼はそこでこの投票CGIを設置し、サイトを訪れてくれる人へ貴方はどのウルトラマンが好きなのかと問い掛けてみるのだった。だが、タケルくんは一つ大きな誤解をしていた。ホームページというものは開設さえしていれば、後は何もしなかろうとどんどん人がやってくるものだと思っていたのだ。だがしかし、世のサイト運営者の多くがそう思う様に、やはり現実の我々への接し方というものは至って辛い。まともな宣伝もしていなかった「タケシのホームページ」へのアクセス数は平均して日に1〜2人、良くて4人が関の山。結果、折角設置したアンケートには必然滅多に票が入る筈はなく、世の非条理を知ったタケシくんはたちまちにしてサイトを閉鎖、そうするや親に先生にと反発し始め、次第に悪いお友達との付き合いが多くなっていき、三ヵ月後には万引き行為の発覚により補導され母親に泣かれるのであった。
タ、タケシーーーーーーーッ!!!
じゃなかったタケルーーーーーーーーーーーーーーッ!!!
つづかない。
が、明日の準備等々の為本日は早めに切り上げないとならないので本題の方は次回へつづく。
ラシックス